第11章 好機逸すべからず
「・・・・これ、だって、関係ないでしょ?ただ同じ名前ってだけだし、それにあの・・・」
「故人の名前だしね。偶然でしょう。珍しい名ではありますが」
「・・・・本当にそう思ってんスか?」
「お前も今関係ないと言ったろう?それでいい」
「・・・盗み読みしに入ってきて何だけど、話が見えねえじゃん?この報告書がなんだっての?草の女がどうしたって?」
符号のようなやり取りをする二人に業を煮やしてカンクロウが口を挟む。
「螺鈿ってのが芙蓉ってのを牡蠣殻に会わせたんだろ?何年前だ?二年?二年か、この日付。じゃ牡蠣殻は元々草に知己がいたって事か?草なんかサッパリわかんねえから誰が誰だか・・・で?名前が何なんだよ?故人の名前?何だそりゃ。関係ないって何が何に?」
「ジャンジャンうるさい。黙れっての」
バッサリ言い捨てた藻裾にカンクロウはムッとした。
「テメエ人を巻き込むだけ巻き込んでその言い方はねえンじゃん?ムカつくじゃん。説明を求めちゃうよ、俺は」
「求められたって答えたげねえよ、アタシは」
「テメエにゃ元から期待してねェ。人の話なんざ一個も聞かねえじゃん。あなたとまともな会話をするのは諦めましたぁ」
「何だ?アタシに喧嘩売ろってのか?いーい度胸だ。歯ァ食い縛れ!ゾロ並みに!」
「俺は傀儡使いなの。口に刀くわえて三刀流の人とは全っ然フィールド違っちゃってンだからな?無茶ぶりすんな。大体何でいきなり殴ろうとする訳?瞬間湯沸かしにも程があるわ、オメエは」
「迷ったら殴る事にしてンだよ、アタシは」
「何に迷った?今何か迷ったかテメエ?びっくりするくらい何の躊躇いもなく暴力に走ろうとしてたじゃん?はー、ヤダヤダ脳ミソ筋肉の体育会系は。俺なんか文系だからもォまるっきりそういうのついてけねえじゃん」
「文系?オメエは帰宅系だろ?」
「またソレ!?何、俺ってそんなにすぐうちに帰っちゃう感じなの!?ウソでしょ!?頑張ってんのに何でよマジで!!今回だってオメエに引きずられて帰り損ねた挙げ句盗み読みのお付き合いまでして、何で帰宅部よ!?思いっきり帰宅し損ねてんのに!?言ったらさっさと帰った奈良の方だろ、帰宅部は!」
「いや、アイツァやらしいくらいバリバリの文系だろ?頭いいし」
「頭いいから文系って何その頭悪い解釈?てか何よ、じゃ俺は何?何で帰宅部!?」