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薄桜鬼~ごめん、何回言っても足りない~藤堂平助

第3章 反対のこと


ここで挿れたら、俺は本当にお春を傷付ける。
わかってんのに...こいつは一生辛い思いをするって...。

でももう俺はここまでやっちまったんだ。
ここでやめたって意味ねぇよな...?


「挿れるぞ。」


「え、いや!いや!!やめてっ!!お願い、やめて!!!...私は千鶴さんじゃな...」







「なぁにしてんの?平助。」


「そ...総司...?」


「沖田さん!」


障子戸を開けたまま総司は入って来て、お春の腕を引っ張り、自分の方へ引き寄せた。


「な、なんで、総司が...?」


「それより平助、この子になにやってんの?」


近藤さん絡み以外のことでは滅多に怒らない総司が、確実にキレてる。

「大丈夫?」と労りながら総司は、お春の手首を縛った帯を取り、綺麗に着物を着せた。


お春は総司にしがみ付いて震えている。

総司のこと苦手な筈なのに...。


「平助、この子のこと守るって言ってなかったっけ?傷付けてどうすんの?それにまだ腕治ってないのに。」


そういえばお春はずっと左腕を庇ってた。

それに俺...守るって言ったのに、全然反対のことしてんじゃねぇかよ...。


「お春...っその......」


俺が声をかけると、身体をビクッと大きく震わせ、俺の方に背を向け、総司に抱き着くように、しがみ付いた。

どうしてだろう......。


総司が苦手なはずのお春が総司に、身体を近づけ密着させてるとこを見ると、悔しさの様な感情が頭の中を駆け巡る。


「.........ごめん」


俺がお春に、幾ら謝っても許されないことをしたのはわかってる。...わかってんのに、した。


千鶴の笑顔とお春の怯え、涙する顔が頭に交互に浮かび、

今の俺は、「ごめん」という言葉しかわからない。
他の言葉は何もわからない。


俺に目も合わせてくれないお春のその小さな背中を見つめ、部屋を出た。






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