第6章 書類配りIV
「(隊士達が操り人形化してしまう前に…何としても冴島桃香を舞台から引き摺り下ろさなければ…)」
「ねぇ流歌、本当のこと言って。さっきあいつらは暴力なんて振るってないって言ってたけど本当は…」
「大丈夫です。何もされてませんよ」
「でも万が一って可能性もあるでしょ?だったらこれからは単独行動は控えた方が…」
「ご心配して頂き有り難うございます。でも本当に何もされてないんです。なのでお気遣いは無用ですよ」
やんわりと拒絶された気がして、乱菊は名前を呼ぼうとする。
「流───」
ガチャッ
「!」
乱菊の言葉は開かれた扉の音によって遮られた。扉を開けた人物は日番谷だった。彼は流歌が執務室にいることに驚いていたが、すぐに眉を顰め、顔をしかめる。
「…何の用だ…神崎」
その声質に『失望』と『苛立ち』が含まれていた。流歌は小さく息を吐いて椅子から立ち上がる。
「遊びに来ただけなら戻れ。そして二度とうちには来るな。分かったな?」
「隊長そんな言い方って…!」
「松本…。しばらくしても帰って来ねぇと思えばサボってやがっな」
「サボるなんて人聞き悪いですよー。戻ろうとしたらつい話し込んじゃって…」
「こいつの話に耳を傾ける必要はない」
「書類に判を押してさえ頂ければ、今すぐにても出て行きますよ」
見損なったと拒絶されてから
顔を合わせるのは今日が初めてだ
彼にとって私は
部下を危険に晒した“殺人者”なのだから
「隊長からも言ってあげてください!この子、あんな目に遭っても一人で行動するって利かないんですよ!」
「あんな目?」
「さっき隊士達と一触即発の雰囲気だったです。胸ぐらは掴まれるし、殴られそうになるしで…」
「ですから乱菊さん。それは気にせずと…」
「お前が先に喧嘩吹っかけたんじゃねぇのか?」
「!」
「隊士達を怒らせるような物言いをしたんだろう。だから殴られそうになった」
日番谷は流歌の手から書類を奪って、判子を取りに机に向かう。余りの理不尽さに顔をしかめるが、呆れて溜息を吐いた。
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