第6章 書類配りIV
「あんなに責められて怖かったでしょ!もう大丈夫よ神崎!」
ギュゥゥッ
「いだだだだ!!」
執務室に入るなり、乱菊は突然流歌を抱きしめる。
「松本副隊長!苦しいです!」
「松本副隊長なんて堅苦しいわね…乱菊さんでいいわよ。あたしも流歌って呼ぶわ。でなきゃ放してあげないわよ?」
「それは無礼過ぎます。僕はただの平なので副隊長を下の名前で呼ぶなど恐れ多い…あだだだだっ!!」
「ら・ん・ぎ・く・さ・ん・は?」
「ら、乱菊さん…」
有無を言わせぬ笑顔に体を縮こまらせた。
「よろしい」
「(こ、怖い…)」
「ねぇ流歌、あんたって…」
「はい?」
「…ううん、何でもないわ」
じっと見つめられたかと思えば、途中で言葉を止め、首を振る乱菊。流歌は大して気にする様子もなく、乱菊に問いかけた。
「乱菊さんは何故、僕を助けたんですか?」
「理由なんてないわ。助けたいと思ったから助けただけ。でも…そうね…強いて言うならあんたのことは一色から聞いてるのよ」
「!一色十二席とお知り合いでしたか」
「あの人嫌いの一色があんたのことを凄く尊敬してるみたいだったから一回話してみたかったのよね」
「尊敬なんて…。あの日番谷隊長は?」
「もう少しで帰って来るわ」
「なら待たせてもらいますね」
椅子に座って日番谷の帰宅を待つ。
「大変みたいね」
「えぇ…散々な目に遭ってます。それでも挫けるわけにはいかないので頑張ってますよ」
「あんたは強いのね」
その言葉を素直に受け止めることは出来なかった。切なげに笑んで目を伏せる。
「乱菊さんは僕が彼女を襲ったと思っていますか?」
「思ってないわ」
「それは何故です?」
「あたしは自分の目で見てないもの以外は信じない主義なの。それに…」
乱菊は笑んで言った。
「好きじゃないのよ、あの子」
「同感です」
それに対して流歌も笑んだ。
「あんたを見て分かったわ。流歌は冴島を襲う奴には見えない。だからあたしはあんたを信じるわ」
「ありがとうございます」
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