第6章 書類配りIV
「…生意気な眼だな。どっちが先輩だと思ってんだ。態度に気をつけろよ」
「先輩ね…。後輩を虐めてその様子を愉しむあなた方を先輩とは到底思えませんが」
「なんだと!?」
「やめて!!」
「…桃香ちゃん」
「ひっく…桃香のせいで二人が喧嘩するのやだよぉ…。流歌君は悪くないの…桃香が全部悪いの…っ」
えぐえぐと涙を溢す桃香の下手な演技に流歌は心底呆れた。
「桃香がちゃんと告白を断っていれば…みんなが争う必要はなかったの。でも…ひっく…こんなことになるなら嫌でも流歌君の想いを受け入れてれば良かったぁ…っ」
「何言ってるんだ桃香ちゃん!そんなの…全然君のせいじゃないよ!」
「そうだって!それに桃香ちゃんがあいつの恋人になるなんて堪えられない!」
「確かに身体はもうあの野郎のモノになっちまった…。でも心だけはまだ捕らわれてない!桃香ちゃんは綺麗なままだ!」
「(何言ってんだこいつら?)」
ふざけた茶番劇を見せられ、流歌はげんなりする。
「(ふふ❤︎どうよアタシの泣き演技は!これで馬鹿な奴らはアタシの虜よ!さぁ…早くこのアタシに土下座して謝りなさい!!)」
泣き演技を続ける桃香は心の中でニヤリと笑った。
「(ハァ…馬鹿馬鹿しい。)」
流歌は首に手を当てる。
「桃香ちゃんに近付くな!」
「もしまた酷い事すんなら俺達全員が相手になる!!」
「(あは♪本当に莫迦な家畜共だわ。少し操っただけで思い通りに動いてくれるんですもの。なんて最高なのかしら…!!)」
「…もう気は済みました?」
「は?」
「気が済んだなら帰っていいですか」
「何言ってんだテメェ…?」
「よくこの状況で帰れると思ったな」
「無駄な会話はしない主義なので」
「っ………!!」
流歌の態度にカッと頭に血を昇らせた男が拳を振り上げた。だが流歌は逃げようとしない。桃香は誰にも気付かれず、ニヤリと笑う。避けないと知った男は容赦なく流歌の顔に向けて拳を振り落とす。
その時だった…。
「何してるの────!!!」
憤怒する声が響き渡った。
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