第6章 書類配りIV
【十番隊舎】
「(やらかした…)」
さっきのは私のミスだ
私の心の甘さが原因だ
暴走するつもりはなかった
「(…“堕ちるな”。)」
自分から堕ちるな
正しい道から外れたら
誰も私を救えなくなる
手を伸ばしても
きっと届かない───……
「(迷うな。私が決めた道だ。『望み』の為に生き抗わなければ…)」
掌をギュッと握り締める。
「守らなきゃ…命に代えても」
そう決意して扉の前で深呼吸をした。
「失礼します」
中に入った途端に変わった空気。
「あ……流歌君…」
そしてこの事件を引き起こした真犯人の桃香は流歌の存在に気付くと、怯えたように目を潤ませた。
「(完全に見計らって泣いたな。)」
その胡散臭い演技にうんざりする。
「てめえ!!何しに来やがった!!」
「書類を届けに来ました」
「書類だと!?よく平気でうちに来れたな!!本当は桃香ちゃんに会いに来たんだろ!?」
「(そんなわけねーだろ。)」
「大丈夫だからね桃香ちゃん」
「オレ達が守ってあげる」
「安心してね!」
「うん♪ありがとぉ❤︎」
上目遣いで男達に色目を使う桃香を見て吐き気がした。
「日番谷隊長はいますか」
無関心とも取れる態度に近くにいた男が歩み寄り、流歌を睨みつける。
「何だその態度。てめぇナメてんのか?桃香ちゃんの視界に入んじゃねーよ」
「別に入ったつもりはありません」
「お前が来たせいで桃香ちゃんが怯えてんだよ!」
「見ろ!顔を俯かせて…体が震えてんだろ!?」
顔を俯かせている桃香は自分の体をギュッと抱きしめて震えていた。隊士達は怖くて震えていると言うが流歌はそうは思えない。
「(笑いそうになってるのを必死に抑え込んで堪えてるだけだろ。)」
流歌は呆れて溜息を吐いた。
「日番谷隊長は不在のようなのでまた午後に伺います。そうお伝えください」
「待てよ」
「何ですか」
近くにいた男が流歌の前に立ち塞がる。
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