第6章 書類配りIV
「だから助けに来ないの?」
「信じてるから」
「!」
「私も彼も“大丈夫”だってお互いを信じきっているから。それにこの程度じゃ負けないと分かっているから彼は来ないんだ」
「…蒼ちゃんと梨央ちゃんの絆ってどこの誰よりも最強だね」
「ありがとう」
手を交差させて重ねれば、青い光が現れ、負傷した箇所を治癒し始める。
「これでよし!」
「キミの治療は相変わらず素晴らしいな」
「治療だけは得意なの」
「医者になれるんじゃないか?」
「霙の夢は薬剤師!まァ…それも人間だった頃の夢だけどね」
「でも夢があることは良いことだよ」
「梨央ちゃんの夢は?」
「夢…なんだろうな…」
「そこは“蒼ちゃんを幸せにすること”って答えなきゃ!」
「もちろん彼の幸せは私の幸せだよ。でも霙のように綺麗な夢はないんだ…」
ふと悲しげに目を伏せる流歌に霙は不思議そうな顔をする。
「あーもう…書類もボロボロだし…」
地面に散らばった書類を拾い集める。
「総隊長に何て説明するかな」
「大変だねぇ〜」
「そういう顔には見えないよ」
「ふふ」
「(とりあえず誤魔化すか。)」
「次はどこの隊に行くの?」
「十番隊で最後だよ」
「冴島桃香のトコじゃん」
霙は嫌そうに顔をしかめた。
「絶対泣き真似するよ」
「真似とは言い難い演技を見せつけられてこっちは良い迷惑だがな」
「霙あの女きらーい」
「あれでも好いてる奴らはいるからね。ま、夢から目を覚ませばそうは言ってられない」
「あーやだやだ!腐れビッチは嫌だ!」
「(毒づくなぁ…)」
「おまけに悪女!狙った獲物は逃がさない性悪女!蒼ちゃんもみっくんもるーたんもあの女の餌食にならなくてホントよかった!」
「そうなってたら私が目を覚まさせてるよ」
「黒い笑みの梨央ちゃん怖ぁ…」
「さて…そろそろ行くよ」
「気をつけてね!」
「キミもね」
「ラジャー!」
霙と別れた流歌は十番隊に向かった。
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