第6章 書類配りIV
梨央と蒼生がどれほど強い絆で結ばれているのかを霙は知っている。
お互いに思い合い
大切な存在だからこそ
その絆に亀裂を入れたくないのだ
壊れてしまえば
きっと二人はダメになるから
「蒼ちゃん言ってたよ。俺には命に代えても守らなきゃならないものがあるって。その存在がこの世の何よりも大切だから俺が傍にいて守ってやらないとダメなんだって…」
「……………」
「ねぇ…梨央ちゃんもでしょう?蒼ちゃんがこの世の何よりも大切な存在だから、蒼ちゃんを守る為に生きてるんでしょう?だったら…蒼ちゃんを傷つけるようなこと、しちゃダメだよ」
「うん…霙の言う通り。ごめん…怒りで我を忘れて…自我を保てなくなった」
「霙達は知ってるよ。二人がお互いを大切に思い合ってること。でもね、自我を保てなくなるくらいブチ切れたらダメでしょ!」
「あー…それは本当に悪かった」
「霙本当に怖かったんだから!」
「うん…」
「蒼ちゃん譲りの気の短さはしょうがないけど限度ってものを考えてよね!」
「(人差し指を振ってぷりぷり怒ってる…)」
「でも…また約束破ってごめんなさい」
「いや…今回は助かったよ。キミが来てくれなければこの手で…。本当にありがとう」
流歌は頭を下げる。
「痣だらけだよ…」
「容赦なく殴られたからな」
「腕も変な方向に反ってるし…」
「グロテスクだよなぁ」
「笑い事じゃない」
「ごめんって。あー…やっぱ骨もポッキリ何本かイッちゃってるよ」
「……………」
「身体も痣だらけ…女の子なのになァ」
「梨央ちゃんって案外図太いよね」
「この程度では死なないよ」
「本当に丈夫な身体だよ」
「簡単に壊れたら困るからね」
「こっち向いて。治してあげる」
「ありがとう」
治癒を得意とする霙の能力は零番隊の中でも優れており、医学書に書かれている知識を全て暗記している程の優秀さだ。
「蒼ちゃんが来てると思った」
「彼は来ないよ」
「こんなに梨央ちゃんが痛い思いをして堪えてるのに?」
「彼は私と交わした約束は絶対に守る人だから」
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