第57章 Epilogue-それは世界で一番の-
「梨央!」
「ルキア」
隊舎に戻る途中、前方から歩いて来るルキアに出会う。
「聞いたぞ。
お前の子供も無事受かったようだな」
「お互いに受かって良かったね」
「ところで梨央」
「なに?」
「今度茶渡がWBO世界ヘビー級に挑むのを知っているか?」
「WBO世界…?ヘビー級?」
「ボクシングだ」
「ああ。うん、知ってる。こないだ織姫ちゃんから連絡があった。それがどうかしたの?」
「子供を連れて遊びに行ってみないか?」
「わあ、すごく楽しそう!」
「茶渡の試合は盆の時期らしいから護廷見習いになれた二人にも通行許可が下りるだろうからな」
「他には誰が来るの?」
「うむ。浅野達が来ることになっている」
「じゃあ久々にみんなに会えるんだ!」
梨央は声を嬉しそうに弾ませる。
「私も夢愛を会わせてあげたいし」
「じゃあ決まりだな!」
そうだ
ご褒美はそれにしよう
「十三番隊は上手くやれてる?」
「無論だ。皆、真面目で隊長を支える覚悟のある者ばかりだ」
「そうやって、みんなに支えられる…みんなが支えたいと思えることも、十三番隊隊長の条件なのかもしれないね。私はピッタリだと思ったよ」
「?」
「ルキアが隊長なの」
「!」
「その隊首羽織とても似合ってる」
「…ありがとう、梨央」
少し恥ずかしそうに笑んだルキアに梨央も笑い返す。
「お前のところは…その…」
「ん?」
ルキアは迷っていた。
正直"それ"を口にしていいのか。
"それ"を伝えることで梨央が悲しむのではないかと。
「お前は…今も独りなのだろう?」
「え?」
でも…知りたいと思った。
彼女の本音を。
「今も独りで…あの隊舎を守っているんだろう?」
「どうしたのルキア」
梨央は困ったように笑う。
「寂しくはないのか」
「……………」
「───と聞けば、お前は無理をして寂しくないと答えるだろう。なら、質問を変える」
「……………」
「新しい仲間を迎えようとは思わないのか?」
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