第57章 Epilogue-それは世界で一番の-
心地よい風が吹き抜けた、その時…
『おめでとう 梨央ちゃん!!』
『おめでとう 隊長』
『おめでとうっス 梨央チャン』
梨央は驚いて目を見開いた。
風の音に乗せて仲間の声が聞こえた。
幻聴かもしれない。
それでも彼女の耳には、結婚を祝福する仲間の声が聞こえたのだ。
『幸せに』
最後に聞こえたのは、誰の声だったのか。
他の誰か判らなくとも、梨央だけは、知っている。
彼女は、うっすらと目に涙を浮かべた。
「(みんなの声がした…。いないはずのみんなの声が…風の音と共に聞こえた気がした。)」
ありがとう
幸せになるよ
梨央は小さく笑った。
祭主の祝詞奏上、二人の三三九度の盃を経て、婚姻の儀は全て滞りなく終了した。
◇◆◇
式のあと、祭祀殿からほど近い居酒屋を貸し切って、祝宴が開かれた。
「梨央ちゃん、こっち向いて〜」
パシャッと一枚、Vサインを作る梨央の笑顔を撮る。
「すっごく可愛いよぉ〜…!」
「あんたさっきから梨央ばーっか撮ってるわねぇ…あたしも撮っていいのよ?」
「ほんと!?撮りたい撮りたいっ!」
仕立てたばかりの着物を見てほしくて仕方ない乱菊が、織姫の前でキメ顔を作る。大輪の牡丹が描かれた若紫色の着物は、乱菊の金色の髪によく似合っていた。
「そーだ!女子みんなで梨央を囲んで撮りましょうよ!」
「わぁ!いいですね〜!」
勇音が賛同すると、あちこちに座っていた女性死神が梨央の周りに集まっていた。
「恋次、シャッター押して!」
「いいっすよ」
恋次は織姫からカメラを受け取り、指示されるままに何枚も写真を撮った。
「邪魔するよォ」
「総隊長!来てくださったんですか!?」
梨央がカメラ撮影から抜け、京楽の元に駆け寄る。
「いやぁ、華やかだねぇ〜」
京楽の視線は着物姿の女性隊士を見た後、梨央にそそがれる。
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