第57章 Epilogue-それは世界で一番の-
「時間か…」
「最高の結婚式にしましょう」
日番谷は手を差し出す。
「行くぞ」
「はい」
その手を取って、二人は参門に向けて歩き出した。
◇◆◇
ざわめいた会場が、鈴の音で一瞬にして静まり返る。
参門脇に立つ銀色の鈴を眼前に掲げた巫女が、凛然と言う。
「新郎様、ご参進!」
門がゆっくりと開いていく。
皆が注視する中現れたのは、羽織袴姿の日番谷だった。
日番谷が門を踏み越えると同時に、雅楽隊の演奏が始まる。
雅やかな音色に合わせ、祭主の老人が日番谷を先導する。あとについて一歩一歩参道を進み、日番谷は祭祀殿へ続く階段の手前で立ち止まった。
祭主に促され、参門を振り向く。
再び、リィーン、と鈴が鳴った。
「新婦様、ご参進!」
巫女の声が響き、開いた門の先に、花嫁が現れた。
その姿に、わあっ、と歓声が上がる。
「…確かに花嫁姿、似合ってんな」
「ちゃんとカメラで撮らなきゃね」
小声で話す一護と織姫は白無垢姿の梨央を見て笑む。
「たくさん撮ってやれ」
「もっちろん!」
持っていた一眼レフを構え、ファインダーを覗く。
「梨央ちゃん…本当に…おめ、でとう…っ」
織姫は感極まって号泣してしまう。
「大丈夫か…?」
「う、んっ…」
ズズ…ッと鼻をすする織姫。
一護は少しずつ近付いてくる二人の姿を見つめる。
すると一護の視線に気付いた梨央はニッと笑顔を向け、バレないように小さく手を振る。
「!」
その姿を見て一護は笑みを浮かべた。
「(アイツのあんな幸せそうな顔は初めて見たな…)」
カメラを構え、花嫁姿で幸せそうに笑う梨央をフィルムに収めた。
二人の前を通り過ぎ、流れる音楽に合わせてゆったりと参道を歩き、祭主に促され、祭祀殿への階段を一段ずつ昇っていく。
梨央の動きに合わせて幸福花がふわりと揺れる。
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