第57章 Epilogue-それは世界で一番の-
尸魂界。
一番区・祭祀殿。
参門から祭祀殿へ延びる参道の両脇に、多くの死神たちが集まっていた。普段通り死覇装で駆けつけた者もいれば、髪を結い上げ美しい着物をまとった者もいる。
尸魂界には神がいないため、静霊廷内に神社や仏閣は存在しない。霊王を神のごとく崇める者も多いが、それはあくまでも王であり、神ではない。
流魂街には、そこに住まう民が生前崇めていた神仏を祀った神殿がいくつも建てられているが、どれも現世での信仰を持ちこんだものであった。
式が開始されるまで、あと数分…。
白無垢姿に身を包んだ梨央は晴天の空を見上げている。
「……………」
頭には特別な液体で固めた幸福花が挿してある。
「晴れて良かったな」
隣に並んだ日番谷は晴れた空を見上げながら言った。
「最高の青空です」
「祝ってくれてるのかもな」
「そうだといいです」
隣を見れば羽織袴姿の日番谷が目に止まる。
「袴姿も似合ってますね」
「お前も似合ってる」
「そう…ですか?」
「あぁ、すげぇ綺麗だ」
「っ………///」
ふわりと笑みを浮かべた日番谷の言葉に恥ずかしさを感じ、頬を赤らめる。
「不意打ちは禁止だって言ったじゃないですか、隊長」
「コラ。もう"隊長"じゃねえだろ?」
「!」
優しく咎められ…
「そうですね、冬獅郎さん」
名前で呼んだ梨央は微笑を浮かべる。
「やっぱりまだ…名前呼びは慣れないです…」
「これからはもっと呼ぶことになるぞ」
「が、頑張ります…っ」
両脇をしめて拳を作る。
前を見据えたまま、日番谷は云う。
「俺を選んでくれてありがとう」
感謝の言葉に梨央は日番谷を見る。
「お前に愛してもらえて俺はすごく幸せ者だ」
「私の方こそ、あなたに愛してもらえてすごく幸せ者です。これからもよろしくお願いします、冬獅郎さん」
「こちらこそよろしく、梨央」
そして、参門の方から、リィーン、と澄んだ鈴の音が鳴り渡った。
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