第56章 Remains-彼女が泣いた日-
「おめっ…でとっ…梨央…ちゃん…っ」
しゃくり上げながら言う織姫に、うんうん、と頷きながら梨央はその背中をさすった。
「はぁ…もう平気…ありがとう、梨央ちゃん!
本当におめでとうっ!!」
織姫がにっこりと笑う。
「…ありがとう、織姫ちゃん」
最後に一筋こぼれて落ちた涙を梨央はそっと指で拭った。
梨央から入籍にまつわる苦労話を聞き、散々笑ったあとで、織姫はふと梨央に尋ねる。
「黒崎くんにはもう話したんだよね?」
「ううん、まだだよ。いっちーにはこのあと報告に行こうと思ってるけど…もう遅いよねぇ。でもきっと彼のことだから夜更かししてるか。よし、窓から侵入しよう」
相変わらずの二人の関係に織姫は可笑しそうに笑う。
「あたしが一番最初でいいのかなぁ…」
少し照れてもじもじしている織姫に梨央は微笑んで言う。
「大好きな友達だから」
その言葉に織姫はまた涙目になって笑った。
「ありがとう、梨央ちゃん!
あたしも大好きだよっ!!」
二人は嬉しそうに抱きしめあった。
◇◆◇
織姫と別れた後、カーテンが閉まっている一護の部屋の窓を少し強めに叩いた。
「…んだよウルセーな。鳥でも突いてんのか?」
若干苛立ちながらベッドに上がり、カーテンを開けたその瞬間…
「ばあっ!!」
「うおわッ!!?」
窓に張り付いていた梨央に驚き、一護はベッドから転げ落ちた。
「ぷ、あはははっ。ナイスリアクション!」
爆笑する梨央に一護はベッドから少し顔を覗かせる。
「梨央…?」
「やっほー、久しぶりだねいっちー」
「オマエ…」
「そんなにビックリしなくても。
あ、ちなみに幽霊じゃないよ」
コンコン、と窓を小さく叩いて"開けて"と合図する。
ベッドに上って窓を開けた一護は驚いた表情で梨央を見ていた。
「何で…消えたんじゃないのか?」
「消えたよ。でも生きてるんだ」
「どういう意味だ…?」
今までにあった出来事を一護に話した。
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