第56章 Remains-彼女が泣いた日-
「そうか…高峰が…」
一護は悲しそうな顔で梨央を見る。
「寂しくねえのか?」
梨央はどこか可笑しそうにクスッと笑う。
「みんな同じ質問をするんだね」
ベッドに座る一護は椅子に座る梨央に悲しそうな目を向けている。
「…寂しいよ。でもいつまでも悲しんでいられない。だって…今すごく幸せなんだ」
「幸せ?」
「入籍したんだ」
「……………」
「おーい、いっちー?」
「入籍…結婚したってことか?」
「うん、今日、結婚しました」
「…冬獅郎か?」
「うん」
微かに笑んだ梨央を見て、一護も嬉しそうに笑う。
「おめでとう」
「ありがとう」
「式はいつなんだ?」
「二週間後だよ。呼ぶから来てね」
「おう。石田達にはもう伝えたのか?」
「織姫ちゃんにはさっき伝えた。雨竜くん達には…もう遅いしキミの口から伝えてくれる?」
「わかった」
「私の花嫁姿、すっごく綺麗だから写真いっぱい撮ってね」
「自分で綺麗とか言うのな」
「フィルム一本じゃ収まらないと思うから予備に何本か持ってきておいた方がいいよ」
「そんなに撮れねえよ」
何年経っても変わらない梨央に、一護は苦笑するも、その顔はどこか嬉しそうだった。
「織姫ちゃん、絶対に泣くだろうな」
「ルキアと恋次の結婚式でも泣いてたからな」
一護はその時の織姫の様子を思い出す。
「ありがとね、いっちー」
「突然なんだよ」
「今まで一緒に戦ってきてくれて。私はキミという希望を見つけた時、あの男に対抗できる術を手に入れたと思った。キミは私の希望なんだ。だからこれからもどうか、その希望を失わせないでくれ」
彼らと何度も剣を取って戦った
何度も共に絶望を乗り越えてきた
何度も共に勝利を手にしてきた
きっと私一人の力じゃダメだった
友達がいたから
仲間がいたから
私はそれを糧にして
最後まで頑張ってこれた
「これからもよろしくね、いっちー」
「おう。俺の方こそよろしくな、梨央」
梨央が笑えば、一護も笑い返した。
next…