第56章 Remains-彼女が泣いた日-
「午後の隊首会で成婚の発表が出来るよう取り計らっておいた…との事です」
「は?」
「午後…の……え!?」
男の言葉に驚きつつ、二人は軽いパニックに陥った。
「しかも今日!?」
「お前の父親、すげぇ強引だな…」
「返す言葉もないです…」
役所を出た二人は男に軽く会釈する。
「みんなの前で報告…」
「不安か?」
「そりゃあ緊張しますよ…」
「俺がいるのにか」
「!」
翡翠の瞳が真っ直ぐ凝視める。
それを見た梨央は首を横に振った。
「いいえ。隊長が一緒なら何も怖くないです」
「もしかしたらまた泣くかもな」
日番谷は意地悪そうに笑う。
「な、泣きませんよ!そう何度も…!」
「そうか」
日番谷は少し笑っていた。
隊首会で報告するため、二人は瞬歩でその場を立ち去った。
◇◆◇
一番隊隊舎・隊首会議場。
伊勢七緒は復興状況の報告を終えると礼をして下がった。
入れ替わるようにして歩み出た京楽が「さて!」と胸の前で手を合わせ、一同を見渡す。
「今日はもう一つ、とっておきの報告があるんだ」
いよいよか…と、梨央は大きく深呼吸した。
チラと日番谷を見ると、落ち着いた様子で前を見据えている。
「…さぁ、出てきて自分たちの口から伝えるといい」
京楽に促され、二人は列の後ろを通り、会議場の入り口前に並び立った。
「知ってる奴もいると思うが、今日コイツと入籍した」
「現在の職務を続けていきますので今度ともよろしくお願いします」
二人が頭を下げるのと同時に、京楽が袂に忍ばせていたクラッカーを取り出し、紐を引く。パーン、と乾いた音が鳴り響いた。
「いんやぁ〜おめでたいよねぇ〜!阿散井副隊長と朽木副隊長の結婚に続いて本当にめでたい〜!」
ひらひらと紙吹雪が舞う中、京楽は皆の顔を見回す。
「あれ?みんなそんなに驚いてないね…?」
「皆さん知っておられたのでは?お二人も隠していたわけではないでしょうし」
「なぁんだ…みんな知ってたのか…」
いやその前に日番谷が"知ってる奴もいると思うが"って言ってただろ、と言いたげな視線をみんなで送る。
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