第56章 Remains-彼女が泣いた日-
《それからこれは余計な事かもしれないですけど…涅サンにそんな便利な物があるなら梨央サンにも教えてあげたらいいんじゃないかとお伝えしたところ…》
「……………」
《『あの小娘に転移杭を上手く使いこなせるとは思えんがネ。まぁ、アレがモルモットとしてもう少し役に立つなら教えてやっても構わんヨ。どうせ教えたところで無駄だと思うがネ。精々新居から野垂れ死ぬ覚悟でちまちま歩いて来給えヨ』って言ってたっス!》
「(本当に余計な事だった…)」
「隊長やっぱり使いましょう」
「お前さっきまで使わないって…」
「便利な物ほど使うべきです。そして思い知らせてやります。涅隊長より私の方が転移杭を上手く使いこなせていることを。そうすればあの人は今後私をモルモットと呼ばなくなるでしょうから」
若干苛立ちを含んだ笑みを浮かべる。
「(コイツ等の仲は一生かかっても直らねえな…)」
常々そう思う日番谷だった。
《それでは梨央サン、日番谷サン、末永くお幸せに!……何かお困り事があれば言ってくださいね。アタシにできる事ならなんでも相談に乗りますんで》
「初代技術開発局局長が相談に乗ってくれるなら怖いモンはねぇな」
「ええ…本当に…」
不本意だが
浦原には何度も助けられた
どんな絶望的な状況であっても
対抗策を練り、進むべき道を示してくれた
私の無茶な要求にも応えてくれた
本当に世話になりっぱなしだな彼には
不本意だが。
「…浦原喜助って、こういう感じの奴なんだな」
「長い付き合いですからね。嫌でも彼の性格はわかりますよ。一度戦いとなれば、あれ程頼りになる者はいないんですが…」
「……………」
「隊長?どうしました?」
「いや…何でもない」
「言いかけた言葉を途中で止めるのはダメです」
人差し指を立てて日番谷にビシッと突きつける。
「…あまり嬉しそうに他の男の話をしないでくれ」
「!」
「少し妬ける」
「ふふっ」
「何で笑うんだよ」
「嫉妬ですね」
「……くそっ、だから言いたくなかったんだよ」
「私は嬉しいですよ」
「嬉しい?」
.