第56章 Remains-彼女が泣いた日-
「お前言ったか?」
日番谷に問われ、梨央は首を横に振った。
《お二人そろってのお休みということは今日はまず高霊局へ行くはずで人別局での待ち時間が退屈になっているお二人は朝早くから出かけたものの案外早く終わって次の役所が開くまで時間があるから談話室の片付けでもしようとこの時間は零番隊舎に行っているはずだと思いましてサプライズを仕掛けてみました〜》
「ほとんど預言者じゃないか!!」
嫌な汗をかきつつ梨央が叫ぶ。
「もしかして監視でもされてんじゃねえか?」
「やめてください恐ろしい!!」
奴なら本気でやりかねない、梨央は身を震わせる。
《アタシも梨央サンにはお世話になりましたんで、浦原商店から特別な贈り物をご用意させていただきました!テッテレー!》
白い煙が一瞬にして晴れ、中身があらわになった。
《転移杭•ワープのすけ〜!!》
中には、手のひら大の赤い杭と青い杭がそれぞれ八本ずつ収められ、空いたスペースに【転移杭•ワープのすけ】と彫られた銀色のプレートがはまっている。
《その杭は、転界結柱の技術を応用して作った、同色四本で囲った二点間を瞬時に移動できるアイテムっス!これから隊舎外で暮らすお二人のために、ご自宅とそれぞれの隊舎を一瞬で移動できるよう、二セットお届けしました!》
「瞬間移動…?」
「便利と言えば便利だけど…」
話が上手すぎるのではないか、と梨央は警戒した。
《同じような物を昔も作ったことがあるんスけど『それを使うて敵に攻め込まれたらなんとする!』って総隊長に怒られちゃいまして…まぁそういうワケなんで、こっそり使ってくださいね〜》
「普及してねぇのはそういう訳か…」
「ラクしていいのかな」
「総隊長が否とされた物は使えねえだろ」
《ちなみに、涅サンはこれと同じような物を静霊廷中に設置してバンバン使ってますけどね〜》
「…やっぱり使うのやめましょう」
「(涅と同じ事をするのが嫌なんだな…)」
涅の名前を出した時点で心底嫌そうな表情を浮かべた梨央。一瞬、そんな便利な物があるなら使おうかなと考えていた矢先、涅も同じ物を使っていることに不快感を抱く。
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