第55章 Blessing-これからの未来-
「式はいつなの?」
「まだ決めてない」
「え?」
「こんな時節だし、もう少し頃合いを見てから…」
「ダメだよ」
「!」
「絶対に式は挙げたほうがいい」
温厚な笑みから一変して、雅は真剣な表情を向ける。
「こんな時だからこそ挙げるべきだ。
…蒼生だってきっとそう望んでるよ」
「……そうだね」
「それに隊長同士の婚姻なんて滅多にないんだし、盛大に祝ったところで誰も文句は言わないよ」
「確かにその通りだ」
「僕は出席できないけど二人の幸せをここから祈ってる」
「ありがとう雅。でも式を挙げる前に色々と準備があるんだよなー…」
「ああ、そっか。貴族が絡む婚姻の場合、金印貴族会議?に行って書面を提出しなきゃいけないんだっけ」
「そうそう。手続きが複雑で…」
頬づえを付きながら苦笑する。
入籍手続とは要約すると次のようなものである。
一、静霊廷内に居住する者の婚姻のため、人別録管理局(七番区)へ婚姻届を提出
ニ、護廷十三隊隊士の婚姻のため、護廷隊士録管理局(四番区)へ隊士婚姻届を提出
三、席官以上の婚姻のため、高次霊位管理局(六番区)へ高霊婚姻届を提出
四、貴族の婚姻のため、貴族会議(中央一番区)へ貴族婚姻届を提出
五、最高貴族の婚姻のため、金印貴族会議(中央一番区)へ婚姻認許状を、夫婦立ち会いの下、当主が提出
六、隊首会にて全隊の隊長、副隊長へ報告
「五に関しては当主は私だからそこは問題ない」
「でも金印貴族会議の窓口が開いてるのは巳の刻…午前九時から十一時の間だけだよね?時間大丈夫?」
「うん、今はまだ八時四十分だし間に合うよ」
「でも静霊廷への人の出入りを扱う人別録管理局は特に忙しいし、あらゆる手続に丸一日かかるって言われてるほど待ち時間が長いって有名だけど…」
「ふむ…それもそうだね。
じゃあ早めに行って来るよ」
「コレありがとう。大事に読むね」
「ゆっくり読んで」
梨央は椅子から立ち上がる。
「それじゃあ…また来るね」
扉に向かって歩き出す。
「梨央」
「!」
呼び止められて立ち止まる。
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