第55章 Blessing-これからの未来-
「ああ…浮竹隊長の小説、気になってたんだ。でもすごく人気だから借りられなくて…」
「私も読んだけど面白かったよ」
「そうなんだ。読むのが今から楽しみだよ」
「読み終わったら感想聞かせて」
「うん」
笑んだ雅だったが、途端に申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「ねぇ梨央…」
「ん?」
「彼らは僕を…恨んでると思う?」
「……………」
「僕は仲間の危機を知っていたにも関わらず、助けに行かなかった。任務を放棄してしまえばあの方を失望させると思って…怖くて助けに行けなかったんだ。陛下と戦うことになれば彼らがどうなるかくらい分かっていたはずなのに…僕は仲間を見捨ててしまった」
顔を俯かせた雅は悲しげに呟く。
「彼らは…きっと僕を…」
「雅。」
「!」
名を呼ばれ、顔を上げる。
「キミはまだ私達を信じ切れてないようだな」
「え?」
「彼らがキミを恨んでいると本気で思っているのか?」
「それは…」
雅はぐっと言葉を飲み込む。
「思ってもいない事を口にするな。彼らはキミの性格をよく知っている。そして誰一人として、キミを恨んでなんかいないさ」
「…本当にいないんだね」
「…そうだな。残ってるのはキミと私だけだ」
「…今更後悔しても遅いって分かってるけど。あの時…任務を放棄してでも…僕は仲間を助けに行くべきだったよ」
光にも似た雅の黄金色の瞳が涙で潤んでいる。
「後悔してるなら彼らの分まで生きよう」
「そうだね…彼らの分まで精一杯生きるよ」
涙を堪えながら雅はぎこちない顔で笑った。
「それともう一つ、大事な報告をしに来た」
「?」
「結婚、することになった」
「!」
柔らかな笑みを浮かべる梨央に雅は驚いた顔を見せる。そして嬉しそうに笑った。
「そっか…おめでとう」
「うん、ありがとう」
「君の幸せを心から願うよ」
「大事な仲間から祝福されるのは嬉しいね」
“仲間”
その言葉に雅は小さく微笑した。
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