第55章 Blessing-これからの未来-
「お、リサちゃん」
「何や」
「あそこ」
梨央の視線の先をリサが辿る。
すると見慣れた二人が談笑している。
「こんにちは」
声をかけると七緒と雛森は同時に振り返った。
「梨央ちゃん!……あっ」
声が大きかった、と雛森が口を押さえる。
リサは“安心しやあ。今あたしらしかおらんで”と慌てる雛森を落ち着かせ、七緒の隣に座った。本を抱えた梨央も雛森の隣に座る。
「…今でも好きなんやね、読者」
机に積まれた本に目をやり、ぽつりと言う。
七緒はハッとしてその横顔を見つめた。
表情の乏しい人だが、その瞳には懐かしさが滲んでいる。
これまでの思いが迫り上がって七緒はぎゅっと胸を押さえた。
「矢胴丸さん…!
私…ずっとあなたにお礼を…!」
「そんなんいらん。…ほれ見い、七緒が急に盛り上がるもんで、雛森がびっくりしとるやん」
「えっ!?いやいやあたしのことはおかまいなく…!隅っこの方で本でも読んでるので…」
雛森は眼前で両手を振り、いそいそと立ち上がる。
「雛森、座っとれ」
「はいぃ…!」
射るようなリサの視線に逆らえず、雛森は即座に着席した。
「桃ちゃんそんなに怖がらなくても大丈夫だよ。リサちゃんは感謝されるの慣れてないだけだから」
「あんたは余計な事言わんでええねん」
「照れなくてもいいのに♪」
「ホンマ性格悪いわ」
「(そっか…この二人、昔からの知り合いなんだよね…)」
「リサちゃ〜ん」
「知らん」
「ええ〜」
「(リサさん達は虚化実験の犠牲に…そして梨央ちゃんはその実験を計画した首謀者として濡れ衣を着せられ、百年もの間監獄に囚われていた…)」
そして今、再会した二人は昔のように楽しそうに笑いあっている。
「ふっ…ううぅ…ひっう…!」
対面から漏れてきた声に三人が顔を向けると、雛森がボロボロと涙を流していた。
「えっ!?雛森さんどうしたの!?」
七緒は慌てて雛森に駆け寄り、ハンカチを渡して背中をさする。
「桃ちゃんどっか痛いの?大丈夫?」
心配そうな顔を浮かべる梨央も雛森の肩に手を置いて慰める。
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