第55章 Blessing-これからの未来-
中央一番区・真央図書館。
「リサちゃんお待たせ〜」
待ち合わせの時間より遅れてやって来た梨央は悪びれもせず、へらへらと笑いながら手を振って現れた。
「はぁ…あんたの遅刻癖は直らんわ」
呆れ返ったリサの口からは深い溜息が溢れ、梨央は両手を合わせて謝罪をする。
「ごめんね。気付いたら約束の時間過ぎてた」
「……………」
「リサちゃーん、機嫌直してよ〜」
「別に怒ってへん。呆れてるだけや」
「でも先に行かずに待っててくれるリサちゃん好きだよ」
「阿呆。早よ行くで」
「はーい」
隣に並んで歩き、図書館の中に入る。
「元の面影もないね」
リサは本棚から新たな一冊を手に取る。
表紙を捲ると、そこに八番図書館所蔵の書籍であることを示す印が押されていた。
「!」
所蔵印の隣に記入された担当者名を見つめる。
「【伊勢七緒】…伊勢副隊長の名前だ」
「どっから顔出してんねん」
肩越しにひょっこりと顔を覗かせる梨央はリサが手にしている開きかけのページに記された伊勢七緒の文字に気付く。
「そういえばリサちゃん、『図書館に所蔵するため』っていう建前で隊費を使って本を買い漁ってたよね」
「……………」
「読み終えた本を適当に箱詰めしては所蔵保管庫に放り込んでいくから八番図書館の保管庫は無秩序だったんだってね。流石は無類の読者好き」
「褒めてる様には聞こえんよ」
「ふふ」
「あんたンとこやて例外やないやろ」
「まぁ…零番図書館は“彼”の為に有る様なものだからね。彼処には現世から取り寄せた世界中の本が保管されてるよ」
「あぁ、そういやおったな。あんたんトコに“本の虫”が」
「リサちゃんも似たようなものでしょ」
「誰が本の虫や」
ツッコミを入れ、リサは振り返る。
「あんたの探し物は見つかったんか?」
「うん。誰にも借りられてなくて良かった」
「あんたが読むん?」
「ううん…リサちゃんと同じ無類の本好きさんに」
「……………」
「きっと退屈してると思うから」
本に視線を落とし、寂しげに笑った。
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