第54章 Beloved-素敵な愛の育て方-
「花には詳しくねえが…そんなに珍しい花なんだな」
「育てるのがとても難しいですからね。種を手に入れるのに入手ルートが少し特殊なんです。でも幸福花は幸せになれる花なので花嫁さんにきっと似合います。袋の色は桜色で…刺繍はルキアが好きなウサギ柄」
メモを出して下書きを始める。
「通常香りは一年ぐらいで消えちゃうんですが、幸福花は何年経ってもその香りが消えることはないんです。そうだ、身に付けられるように紐で結んじゃおう」
「随分嬉しそうだな」
「すごく嬉しいです。だって大好きな友達同士が結婚するんですよ。喜ばずにはいられません」
「お前は嬉し泣きしそうだな」
「え?」
「大勢の奴等から祝われたら」
「な、泣きませんよ」
「どうだかな」
「むぅ……」
不貞腐れたように頬を膨らませる。
「でもお前なら何でも似合いそうだな」
「!」
突然手を取られたかと思えば、日番谷は梨央の左手の薬指に唇を軽く押し当てる。
「た、隊長…っ!」
「いつかこの指に本物をはめてやる」
「っ………」
「その時はお前の花嫁姿、楽しみだな」
そう言って笑った日番谷にドキッとした。
「絶対にわざとだ…」
頬を赤めて顔を俯かせる。
「ほら、いつまで恥ずかしがってんだ。祝いの品作るんだろ?」
「誰のせいですか!」
「悪い悪い」
絶対に悪いと思ってない…
「早速作ろう」
「手伝う」
「ありがとうございます」
日番谷の手も借りながらルキアの為の香り袋を真心込めて作ることにした。そして完成した香り袋を持って梨央はルキアの元へと向かう。
◇◆◇
「(いた!)」
視線の先にルキアの姿を見つける。偶然にも恋次と雛森、乱菊まで揃っている。楽しそうに話している四人を見て懐かしさが込み上げ、自然と笑みが溢れた。
「こんにちは」
歩み寄って声を掛けると、四人は驚いた顔をした。
「梨央ちゃん…」
雛森は一瞬辛そうな顔をしたがすぐにニコッと笑う。
「どうしたの?」
「二人に渡すものがあって」
ルキアと恋次に向き直り、小箱の蓋を開け、桜色の香り袋を贈った。
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