第54章 Beloved-素敵な愛の育て方-
「泣いたら兄が心配します」
「すでに泣いてんのにな」
「うっ…こ、これは…!」
まだ目に溜まっている涙を日番谷はそっと拭う。それに梨央は恥ずかしげに照れた。
「私、頑張るって決めたんです。でも私の罪が消えたわけではありません。この罪は一生背負っていかなければならないと思ってます。それでも兄がくれた幸せを手放す気はありません」
「そうか。なら俺も一緒に頑張る」
「隊長もですか?」
「二人一緒なら怖くねえだろ?」
「むしろ心強いです」
笑って答えた。
「隊長、こうしてまた会うことができて嬉しいです。これからはずっと貴方の傍にいられる」
「もう離さないからな。
ずっと俺のそばにいろ」
「離さないでください。
ずっと私のそばにいて」
お互いに抱きしめ合う。
「本当は…怖かったんです」
「怖い?」
「もちろん“死ぬことに対して”じゃありません。この世界から消えてしまえば、隊長に会えなくなる。残される側の気持ちは知っている筈なのに…私はあなたを置いていなくなってしまった。愛する人と永遠に会えなくなるのは…とても怖くて…悲しかったです」
この先
また彼を傷つけるかもしれない
悲しませてしまうかもしれない
それでも私は
この人と共に未来を歩みたい
愛する人と幸せになりたい
「でも隊長と一緒なら何も怖くないです」
「当たり前だろ。俺が傍にいるんだから」
「はい」
体を離してお互いに笑い合う。
「あいつらには言うんだろ?」
「そのつもりです。けどその前に…お祝いの品を贈らないと」
「もしかして朽木と阿散井にか?」
梨央は頷いた。
「和装には何が似合うかな。はぁぁ…ルキアの白無垢姿、早く見たい。きっと綺麗で可愛いんだろうなー」
白無垢姿のルキアを想像して品物を決める。
「あ。」
「どうした?」
「幸福花…。やちる先輩と一緒に育てた幸福花で香り袋を作ろうと思います」
「香り袋?」
「常温で香りを発する香料を詰めた香り袋です。私の里にしか存在しない花なのでとても貴重なんですよ」
.