第54章 Beloved-素敵な愛の育て方-
「隊長!痛いです!」
「じゃあ離すから逃げんなよ!?」
「に、逃げません…」
「嘘つけ!逃げる気満々じゃねえか!」
「隊長がしつこいからです!」
「俺は質問してるだけだろ!その指輪どこで見つけた!何でお前が持ってんだ!!」
「お、大きな声出さないでください!」
「出してねえだろ!!」
「出してます!!」
「お前がちゃんと説明しねえからだろ!」
「隊長に説明する理由がありません!」
「お前になくても俺にはあるんだよ!」
「な、何でですか!」
「その指輪はあいつの───!!」
そこまで言いかけて口を閉ざした日番谷。悲しげに顔をしかめ、黙り込んでしまった。
「…いや…何でもねえ。今のは忘れてくれ」
「で、でも…」
「お前には関係ない」
「!」
パッと手を離す日番谷の言葉に傷付き、梨央は涙を浮かべる。
「…泣くのは卑怯だろ」
「泣いて、ません…」
「俺の言葉が悪かった。流石に酷かったな。謝るから…そんな悲しそうな顔で泣くな」
「(泣きたかったら泣けって言ったのに…)」
「それと乱暴にして悪かった。痛かったか?」
「だいじょうぶ、です…」
「お前を泣かせるつもりはなかった。ただ…その指輪は俺の大切な奴の持ち物かも知れねえんだ。無理やり奪うつもりはなかった」
「(知ってる。私は貴方の大切な人だから。)」
「余計に嫌われちまったな」
「!」
「もう何も聞いたりしねえから安心しろ」
「(あ───……)」
悲しそうに笑う日番谷の目は寂しそうだった。
離れていく…
「ま、まって…」
背を向け遠ざかる日番谷の隊首羽織を慌てて掴む。
「!」
「…隊長を…嫌いになるはずないです」
この人が私から
離れて行ってしまう───……
「お願い…嫌いに…ならないで…」
「(何だ…この違和感は…)」
日番谷は泣きそうな顔をしている梨央を見つめる。
「(この感じ、どこかで…)」
「隊長……」
こいつの言葉はまるで───……
「梨央……?」
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