第54章 Beloved-素敵な愛の育て方-
「なら随分と演技が下手なんだな。そんな挙動不審だと“隠してます”って白状してるようなもんだ」
「本当に何も隠してなんか…」
「仁科」
「!」
「俺の目を見ろ」
「ど、どうしてですか」
「人と話してる時は相手の目を見ろ。常識だろ。それともお前は相手の目も見ない非常識な奴なのか?」
「……………」
観念して日番谷を見た。
「(あ…綺麗な翡翠の瞳。)」
だが、すぐに逸らしてしまう。
「お前な…」
「……………」
「いい加減にしろ」
「(…怒ってる。)」
それがビシビシと空気で伝わる
私のせいなのはわかってる
でも…まだ迷ったまま
「はぁ……」
日番谷は深い溜息を吐いた。
「仁科、本当に何か悩んでるなら話せ」
「……………」
「ちゃんと聞くから」
「(こんな時まで優しい人…)」
日番谷と目を合わせて言った。
「隊長に話すことは何もありません」
「……………」
顔をしかめた日番谷だが、その眼に悲しみの色が宿る。そして素っ気なく突き放す。
「もういい」
「!」
ああ 嫌われた
当然だ
私が全部悪いんだから
「…ごめんなさい」
「!」
日番谷が振り返ると梨央は扉に向かって歩き出す。
「(くそ……っ)」
泣きそうなその声に苛立ちを募らせる日番谷だったが…何気なく向けた眼が彼女の手に止まる。
「!」
目を見張った日番谷は咄嗟に駆け寄り、梨央の手を掴む。
ぐいっ
突然手を掴まれ、梨央は驚いて振り返る。
「お前…その指輪…」
「え?」
「何であいつの指輪なんかしてんだ…?」
「!?」
しまった!
外すの忘れてた…!
「は、離してください…!!」
「離さねえ!ちゃんと説明しろ!」
「知りません!」
「知らないのに何でこの指輪をしてる!」
「お願いだから手を離して…っ」
引き剥がそうとするも掴まれた手の力が強くて梨央は焦り出す。
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