第54章 Beloved-素敵な愛の育て方-
戻って来た梨央は一番隊舎の保管庫にいた。
透明なガラスケースの中には一本の刀が保管されている。
「…久しぶりだね、天照」
ガラスケースに触れると覆っていた箱が消えた。
「キミはまだこんな私を主人だと認めてくれるのか」
嬉しそうに微笑み、刀を手に取る。
「!」
刀の柄部分に何が括り付けられているのが分かった。
「これは…!」
青い指輪だった─────。
「母様の大切な形見…」
指輪を親指にはめて自分の目線より高く上げる。
そして片手で包み込むと胸元でギュッと抱き込む。
「さて…長居は無用。
早く此処から立ち去────」
「そこで何をしてるんだい?」
「!!」
驚いて振り返るとそこに京楽が立っていた。
京楽は梨央を見やり、腰に付けた刀に目を向ける。
「それは彼女の───」
「京楽隊長…」
「!!」
思わず京楽の名を呟く。
"京楽総隊長"ではなく
"京楽隊長"と、昔の呼び方で…。
それを京楽が聞き逃す筈もなく…。
「梨央ちゃん…今ボクのこと…なんて…?」
「!?」
しまった!
「い、いえ…何でもありませんよ京楽総隊長」
「……………」
緊張の糸が張りつめ、バレるのを恐れて咄嗟に呼び方を訂正する。
慌てて否定したが京楽の疑惑の眼差しは変わらない。
「それは彼女の斬魄刀だよ。勝手に使うのは避けて貰えると有難いんだけどな」
「すみません…珍しい斬魄刀だったもので」
「その斬魄刀と指輪が保管庫にあることを何故知ってるんだい?ボクと“彼”以外は誰も知らない筈なんだよ」
「………………」
梨央は気まずそうに視線を逸らす。
ドクン
ドクン
「答えてくれるかい」
どうする
「………………」
どうにか回避策はないかと考え込んでいる中、京楽は次第に気付き始める。
「(もしかして…彼女は…)」
「総隊長、実は…」
「梨央ちゃん…なのかい?」
「!」
「記憶が戻ってるの…?」
驚いて目を見開く。
「どうして…」
「ボクにはわかるんだ」
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