第54章 Beloved-素敵な愛の育て方-
『きっと俺の代わりに護ってくれる』
((…お願い。どこにも行かないで…。))
『お前が望むなら何だって叶えてやりたい。でも駄目だ。それは叶えられない』
((一緒にいてよ、お兄ちゃん…。))
泣いている梨央を見て心が痛む蒼生。辛そうに顔を歪めるも、ぐっと思い留まる。
『そうだな。俺もお前の傍にいたい。子供の頃からお前をずっと護ってきたんだ。けど…ごめんな。俺は自分の意志を曲げるつもりはねえ』
((私のお願い、聞いてよ…っ))
涙でぐしゃぐしゃの顔のまま訴えかけるが…蒼生は首を振ってくれない。それが嫌で顔を俯かせる。
『そろそろ泣き止んでくれねえと…心配で行けねえだろ?なぁ梨央、笑ってくれ。お前は…笑った方が可愛いんだから』
優しげな声に泣きそうになった。顔を上げると蒼生は可笑しそうに笑った。
『ひでえ顔。泣きすぎて涙で顔がぐしゃぐしゃじゃねーか。でも泣いてても美人なんだよな、お前は。母さんに似て。』
((本当に…もう会えない?))
『会えねーな。でも心配すんな。俺は世界から消えるが…ずっとお前の心の中で生き続ける。だからもう…泣き止め。な?』
泣きそうな声だった。それを聞いた梨央は“蒼生も自分と同じ気持ち。本当は会えなくなるのが寂しい”のだと思った。
『お前なら日番谷と幸せな未来を歩める。今まで大変だったろ。よく頑張ったな。お疲れさん』
((……………))
『お前は俺の自慢の妹だ』
((私も…蒼生は自慢のお兄ちゃんだよ。))
『知ってる』
蒼生は嬉しそうに笑う。
((…生きる。キミを心配させないように愛する人と一緒に未来に向かって歩んでいく!))
『!』
((だから“頑張る”!これからの人生で絶望に呑まれることもあるかも知れない!それでも“諦めないで頑張る”!))
((だから…見守ってて。))
『当たり前だろ。大丈夫だ。お前は俺に似て強い。だから、頑張れ。』
((うん…!))
『やっと笑った。俺の好きな顔だ』
目の前に霧がかかり始める。
『お前の幸せを心から願ってる───……』
蒼生は愛おしそうな目で微笑み、梨央も一粒の涙を溢して笑った。
.