第54章 Beloved-素敵な愛の育て方-
『本当に後悔はないんですか?』
『ねえな』
ハッキリとそう答える。
『あーでも…枷になっちまうかな』
『枷?』
『せっかく救えたと思えたのに…俺のせいで余計な“重荷”を背負わせちまう』
『彼女は貴方が生き甲斐みたいなものですからね』
『“俺の為”を理由に縛り付けたくねえんだよ。あいつはいつも誰かの為に行動してたからな。自分の為に生きたらいいのにって思うよ』
『それは難しいですね。彼女の性格、ご存知でしょう?その“誰かの為”のほとんどが貴方の為です。貴方が傷つく事を何よりも嫌い、貴方を傷付ける者は誰であろうと許せない。本当に兄想いの優しい妹に育ちましたね』
『知ってんよ』
蒼生は嬉しそうに笑う。
『…なァ、聡明。』
『はい?』
『悪いな』
『!』
『俺もあいつも親不孝者で』
その言葉に聡明は軽く笑み、かぶりを振る。
『親不孝なんてとんでもない。二人がいたからこそ幸せだったんです。私も罪禍も。貴方達が生まれてきてくれただけでもう十分親孝行ですよ』
『そうか…』
『罪禍なんてお腹の中にいる子が双子だと知った時はものすごーく喜んでました。それはもう愛らしい女神が軽やかなステップを踏んでいるかのようでした』
『サラッと惚気んなよ…』
蒼生はすかさずツッコミを入れる。
そして聡明は優しげに微笑む。
『僕は良い父親になれたかな?』
『!』
『君達に嫌われてないといいんだけど…』
遠慮がちに笑う聡明に蒼生は面倒くさそうに言う。
『父さんは最高の父親だよ』
『!』
『つーか…嫌うとかねえだろ。俺達の父親なんだから自信持て。あーやべぇ…恥ずい。』
『そっか。ふふ…まさか蒼生がデレてくれるなんてね。レア中のレアだよ』
『あ?デレてねーわ。そっちこそ嬉しさの余り顔がデレデレになってんぞ』
『それはそうです。自分の子供から好きだと言われて嬉しくない父親がいますか』
『いや、好きなんて言ってねーけど…』
蒼生の言葉なんて聞こえておらず、聡明は嬉しそうにニコニコと笑っている。
『父さん、あいつに伝言を頼めるか?』
『もちろんです』
『なら…これだけは伝えてくれ』
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