第54章 Beloved-素敵な愛の育て方-
「松本副隊長、只今帰りました」
「おかえり」
パタパタと駆け寄って来る梨央を見て乱菊は気付く。
彼女の頭に付いた髪飾りに。
「ショートケーキ、とても美味しかったです」
梨央の後ろから歩いて来る日番谷に視線を向ける。
日番谷は乱菊の視線に気付き、何だとでも言いたげな目で見た。
髪飾りを贈った日番谷の気持ちを理解した乱菊は視線を梨央に戻してニコリと微笑んだ。
「その髪飾り、すっごく似合ってるわよ」
「!ありがとうございます」
恥ずかしそうに梨央は笑う。
「手伝いますよ」
「いーのいーの、もう少しで終わるし。それより、この書類を五番隊に届けてくれる?」
「わかりました」
乱菊から書類を受け取ると梨央は日番谷に頭を下げて執務室を出て行った。
「どうでした?楽しかったですか?」
「真面目に仕事してたんだな」
「当たり前ですよ〜…じゃなくて!
梨央とはどうだったんですか?」
「どうって?」
「あの髪飾りを渡した時の反応は?」
「ない」
「何でですか!」
「俺に怒るな」
「思い出すと思ったのにィ〜!」
乱菊は頭を抱えて唸る。
「けど…可能性はある」
「本当ですか?」
日番谷は頷く。
「隊長、嬉しそうですね」
「そう見えるか」
「だってあの子が嬉しそうな顔をしていると隊長も嬉しそうですから」
ニコリと笑えば日番谷はバツが悪そうに目を逸らす。
「ゆっくりでいいんです。もう一度、二度目の恋を始めればいいんです。素敵な愛の育て方は二人なら知ってる筈ですから。まぁ…二度目の恋は盲目かもしれませんが」
ニヤリと意地悪そうに笑う。
「頑張るしかねえだろ」
「応援してます!」
「ありがとな松本」
「いーえ。二人はあたしの理想ですから」
「そうか」
乱菊の言葉に日番谷は小さく笑んだ。
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