第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
「そりゃするだろ。眠八號は隊長が"眠七號"から回収した脳を元に造った被造魂魄だからな」
「被造…魂魄?」
「お前…技術開発局って知ってるか?」
「いえ…今日が初めてなので」
二人の間で会話が交わされている間も眠八號は爆走している。
「八號ちゃん!!止まらないとミルクあげないわよ!!」
シュダダダダッ
眠八號は物に釣られない。
「何で止まってくれないのよ〜!!」
「挟み撃ちにするか!?」
「莫迦!!赤ん坊を怖がらせてどうすんのよ!!」
「赤ん坊っつっても…八號だしなぁ」
シュダダダダーッ!!
八號は局内を走り回る。
「八號ちゃん」
梨央が声をかけると八號はピタリと止まって振り返る。
「こんにちは」
挨拶をすると赤子とは思えない礼儀正しさでペコッと頭を下げて挨拶をしてくれた。
「八號ちゃんはまだ小さいですね」
「隊長の自信作だからな」
「自信作?」
「眠八號はまだ捕まらんのかネ!」
「!!」
「そろそろ検査の時間だヨ!」
「それが早くて…」
「何の為に君達を眠八號捕獲係に任命したと思っている。死ぬ気で捕獲しなければ一生私の奴隷として働いてもらうヨ。それはもう馬車馬の様にネ」
「ええーッ!!」
「それが嫌なら早く捕獲し給え」
あまりの言い草に隊士達は落胆した。
それでも嫌とは言えず、死ぬ気で眠八號の捕獲を再開する。
「それで?何だネ、その小娘は?」
「!」
「フン、死んだかと思えば生きてたとは…悪運の強い奴だヨ。だが聞いた話によると…昔の記憶を失っているそうじゃないカ!しかも君は事故を起こした訳でもない。これは素晴らしい発見だヨ!是非、検査して脳を調べさせてくれ!」
「…………」
「研究材料としてその身を差し出せば命の保証はしてやろう!なァに、心配いらない!少し中を弄り回すだけだ。薬物投了で痛みは和らげる。その代わり幻覚症状と吐き気が襲うがネ」
「(ああ"これ"か。)」
「前々から君をずっと解体したいと思っていたんだヨ。もう一度、実験台(モルモット)として私の役に立ってくれないかネ」
「(苛立ちの根源は。)」
.