第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
梨央は顔を伏せて黙り込んだ。
「("ふざけるな")」
そんな感情が湧き上がる。
「…人を研究の材料にするのは解せませんね。
況してや実験体(モルモット)なんて死んでも冗談じゃない」
梨央はゆっくりと顔を上げた。
「…ホゥ…記憶は無くとも私を嫌悪するのは変わらん様だネ」
「嫌悪なんてとんでもない。ただ人として終わってると思っただけです」
ザワッ
隊士達がざわつき始める。
「ふ、副隊長…止めなくていいんスか?」
「止めても無駄だ。
あの二人は昔からああだからな」
「昔から?」
入ったばかりの新人隊士達は不思議そうな顔をする。
一方、昔から二人の関係を知っている隊士達は互いを睨み合う二人の様子を心配そうに見ていた。
「涅隊長、何故あなたは人を人として扱わないのです?」
「君が私の実験体(モルモット)になると云うなら応えようじゃないカ」
「だからなりません」
「なら応える必要は無いヨ」
「質問してるだけじゃないですか」
「下等種の分際で私に質問していいと思っているのかネ?」
ピシッ
その瞬間、亀裂が入った音が響いた。
「はぁ…」
阿近は深い溜息を吐く。
「なるほど…隊長のことがよォく解りました」
「何が解ったのかネ」
「私はあなたが嫌いです」
「それは大変光栄な事だ。君の様な"化け物"に好かれても悍ましくて吐き気がするだけだヨ」
「その横柄で自分勝手な性格、直した方が良いと思いますよ。じゃなきゃ、この先誰もあなたに従わなくなります」
「言葉を返す様だが、君は強引で自由奔放な性格が目立つ。そういう奴に限って早死にする。気を付け給えヨ」
「余計なお世話です」
「用が済んだならとっとと出て行き給え」
「言われずとも」
シンと静まり返る隊舎。
二人の様子を固唾を飲んで見守っていた隊士達。
案の定、一触即発なモードでバトルを終えた二人。
梨央はギリッと歯を噛みしめて出て行った。
「あの二人って…仲悪いんですか?」
「そうだな…昔から相性の合わない同士だ」
阿近はまた深い溜息を吐いたのだった。
next…