第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
「うちは厳しいぞ」
「大丈夫です。負けません」
「女だからと言って特別扱いはしない」
「分かってます」
「仕事はサボるな」
「それは当たり前なのでは?」
小首を傾げた梨央に対してサボリ魔である乱菊はまるで自分のことを言われている様な気がして視線を逸らした。
「それと…」
「(何だろう…)」
「泣きたい時は我慢せずに泣け」
「!」
「寂しい時は必ず言え。不安な時は相談しろ。
頼むから…知らないところで一人で泣くな」
「……………」
日番谷の悲痛な言葉とそれに込められた思いに戸惑いの色を浮かべる梨央は、どうしていいのかわからず乱菊を見る。
「!」
すると乱菊は口元に笑みを浮かべた。
それを見て日番谷にもう一度視線を戻す。
「わかりました」
日番谷も梨央を見る。
「約束します」
「ありがとう」
「(不思議な人…)」
冷たそうに見えるのに
とても優しくて
悲しんだ表情さえ
「(愛しい───……)」
梨央は目を見開いた。
「(イト、シイ…?何が?誰を?)」
無意識に発した自分の言葉に驚く。
「(何でそんな感情…)」
「ねぇ梨央、あんた甘いものは好き?」
「はい。大好きです」
「じゃあショートケーキがすごく美味しいお店、紹介するわ。きっと気にいるはずよ」
「わあ本当ですか!嬉しいです」
「ね、隊長、連れてってあげてくださいよ〜」
「何で俺が…」
「えーいいじゃないですかぁー」
「仕事で忙しい」
「そんなのあたしが全部やりますって!
明日でいいですか?」
「おい勝手に…」
「あの…忙しいなら一人でも…」
「隊長、お願いします」
乱菊の真剣な頼みに日番谷は小さく息を吐いて梨央を見る。
「俺と一緒でもいいか?」
「は、はいっ!」
「じゃあ明日ですね!」
「何でお前が決めるんだ?」
「そんなのどうでもいいんです!ちゃんと楽しんで来てくださいね!二人とも!」
乱菊の計らいで二人は出かける約束を交わした。
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