第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
そして六番隊舎に到着した。
「六番隊は…朽木隊長。ん…?"朽木"?
はて…どこかで?」
『知り合いが結婚することになって…』
「ああ、あの時の。
"朽木様"の兄上様が隊長なのか」
料亭で出会った気弱そうな少年が言っていた。
"知り合いが結婚することになった"と。
朽木家は四大貴族と呼ばれ
尸魂界における貴族の最高位である
正一位の位を持つ四家を指す。
『朽木家』『四楓院家』等がそれに当たり
他の死神達とは比べ物にならない霊力を
生まれ持つことも特徴である
「住む世界が違うなぁ」
自嘲気味に笑って扉を叩いた。
「失礼します」
扉を押し引いて開けると一人の男性が椅子に座っている。
「(この人が六番隊長…"朽木様"の兄上様…)」
「何を惚けている」
「あ、すみません…」
数歩進んで頭を下げる。
「この度は妹君の御婚姻おめでとうございます」
「何故兄がそのことを知っている」
「あの日私も『花くれなゐ』にいまして、朽木様のご関係者と間違われました。そのご関係者様の一人とぶつかってしまって聞いたらご結婚されると言っていたので…」
「そうか…」
白哉は顔色を変えずに素っ気なく返す。
「(この人はあまり感情が表に出ないんだな…)」
厳格な表情を浮かべるがクスリとも笑わない。
「妹君のお相手はどんな方なんですか?」
「阿散井恋次、うちの副隊長だ」
「そうなんですか」
「…兄は」
「はい?」
「…なんでもない」
「(言いかけた言葉を途中で止めるのはいけないけど…隊長相手にそんなこと言えないしな)」
「!指輪はしていないのか」
「え?」
白哉の視線は梨央の親指に向けられている。
「(指輪…?)」
「………………」
困った顔を浮かべる梨央にそれ以上問い質す事はせず、書類に目を向ける白哉。
「用が済んだのなら早々に立ち去るが良い」
「はい。ありがとうございました」
梨央は頭を下げると執務室を出て行った。
「兄が…大事な友人達を忘れるとはな」
白哉は小さく呟いた。
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