第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
「ああでも…歳の近い兄がいてくれたら嬉しいです」
「!」
「きっと大事にしてくれると思うんです」
「(無意識に脳が記憶してるんやろうな…。
いや…本人じゃない可能性もあんのか…)」
「困った時には必ず助けてくれる…そんな優しい兄だったらいいなとは思います」
「優しかったよ」
「え…?」
「その人は誰よりも妹のことを大切に思ってた。少し無愛想でちょっと怒りっぽいけど…すっごく妹のことを大事に想ってるよ」
梨央は驚いた顔で雛森を見ている。
それに気付いた雛森はハッとして慌てて誤魔化す。
「あ、違くて…えっと…梨央ちゃんにはそういうお兄さんが似合うと思ったの…!私の勝手な想像!気にしないで!」
「そっか」
梨央は小さく笑んだ。
「雛森副隊長、兄妹は?」
「ううん、一人っ子。
でも日番谷くんとは幼馴染だよ」
「日番谷くん?」
「十番隊長や」
「そうだったんですね。
雛森副隊長と日番谷隊長はお似合いです」
「それは…恋人としてってこと?」
何気ない発言が雛森の胸に突き刺さる。
悲しそうな目をした雛森に梨央は慌てて弁解する。
「あ、いえ…そういうつもりで言ったんじゃ…」
「私より梨央ちゃんの方が何倍もお似合いだよ」
「私が隊長と?む、無理です!」
「どうして?」
「私のような新人と有名人並みの隊長とでは天と地の差。お、恐れ多いです…」
両手を胸の高さまで上げて左右に振る。
「隊長と副隊長の皆様にお会いすることすら私にとっては奇跡に等しいのに。そ、その…恋仲になるというのは…烏滸がましいです…はい…」
「そっか…」
二人の関係を知っているからこそ、雛森は悲しくなった。
彼女は、日番谷のことが好きで、恋に臆病になりながらも、必死に自分の想いを伝えて結ばれた。
そして目の前に現れた彼女と同じ名前を名乗る少女に雛森は複雑な思いを抱く。
「(間違うはずない…彼女は梨央ちゃんだよ。)」
「そろそろ行きます」
「梨央ちゃん」
「!」
「頑張って」
雛森の言葉に梨央は笑って出て行った。
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