第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
「じゃあ頑張って」
「未亜ちゃんは入らないの?」
「案内役はここまで」
ニコリと笑んだ未亜は手を振って去って行く。
「…藍染惣右介の後を引き継いだ隊長か」
目を閉じて一呼吸置く。
「よし」
コンコンッ
「開いてるでー」
「!」
気の抜けた様な声に驚いたが、ドアを開けて中に入った。
「おーホンマに似てんなァ」
「(関西弁おかっぱ頭…)」
「平子真子や。よろしゅう」
「ご丁寧に有難うございます」
頭を下げる。
「珍しいモンが見れたわ」
「は?」
「気にせんといて。こっちの話や」
記憶を失う前の彼女は平子の前でも頭を下げることは無かった。それが今の彼女はわざわざ自己紹介をしてくれた平子に感謝して頭を下げた。平子からして見れば大変珍しい事なのである。
「うちの副隊長も紹介しとくわ」
平子の後ろに立っている雛森に視線を向ける。
「雛森桃。うちの紅一点や」
「平子隊長、やめてください」
「ええやん、減るモンでも無いやろ?」
「そういう問題じゃない気が…」
「未亜ちゃんから聞いてます。雛森副隊長ですよね?吉良副隊長とは同期だと四楓院先生からお聞きしてます」
ニコッと笑いかける梨央を見た雛森はキュッと唇を結んで悲しい顔を浮かべた。
「(どう見ても梨央ちゃんだよ…)」
「桃。」
「!」
ハッとして平子を見れば、"しっかりしろ"と訴えているかのような眼差しで桃を見ていた。
「初めまして梨央ちゃん、雛森桃です。入ったばかりで不安な事もあると思うけど遠慮なく相談して。力になるから」
「有難うございます。よかった…」
「え?」
「雛森副隊長が優しい方で」
「……………」
「同い年ぐらいの女の子がいてくれてとても嬉しいです」
「うん、私も嬉しい」
ぎこちない笑顔で雛森は笑った。
「仁科は兄妹はおるんか?」
「!」
「兄妹…ですか?」
平子の問いにかぶりを振る。
「いいえ。一人っ子です」
「…そうか」
平子は落胆した。
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