第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
「待ってたわよ!」
五番隊舎に着けば未亜が待っていた。
彼女は五番隊を希望したのだ。
「怪我の具合はどう?」
「もうピンピンよ!」
「ごめんね…」
「どうして貴女が謝るの?」
「私がもっと早くに虚が本物だって気付いていたら未亜ちゃんは重傷を負わずにいた。無力だって思い知らされたよ…」
「そんなの貴女のせいじゃないわ。間違いなく私のミスよ。討伐に舞い上がって貴女の声が聞こえてなかったの。落ち度は私にある」
「……………」
「そんな顔しないの!
あれは仕方なかったんだから!」
「でも…」
「あーもうこの話は終わり!平子隊長に貴女を迎えに行くよう言われて待ってたのよ。さ、早く行きましょう」
少し強引に手を掴むと引っ張って行く。
「未亜ちゃん」
「何かしら?」
「前隊長だった藍染惣右介って人知ってる?」
「五番隊の?」
「うん」
「知ってるわよ。その人がどうかした?」
「なんか…胸がモヤっとするの」
「モヤ?」
「黒い感情の渦がドロドロ…」
「何それ」
「わからない…けど…」
この黒い感情は
たぶん怒り───……
「その人…今どうしてるのかな?」
「聞いた話によれば今は真央地下大監獄最下層・第8監獄の『無間』って処に幽閉されているらしいわね」
「何でそんな処に?」
「さあね。しかも刑期は2万年ですってよ」
「(何をしたら刑期が2万年にもなるんだろう…)」
「気になるの?」
後ろを振り向いてニヤリと笑う。
「そんなんじゃないよ。ただ…」
「ただ?」
「彼には会いたくないなって思っただけ」
「まだ会った事もないのに会いたくないの?」
「うん」
「変わった理由ねー」
未亜は可笑しそうに笑う。
「(怒り…何でこんな感情を抱くのか不思議。)」
「五番隊はね、雛森副隊長がいるのよ」
「鬼道の達人の?」
「ええ。彼女に憧れて五番隊に志願する隊士もいるんですって。可愛いわよ、雛森桃副隊長」
「上官に可愛いとか言っちゃダメだよ」
「だって本当の事だもの。さ、着いたわ!」
未亜は執務室の前で立ち止まる。
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