第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
「今はもう…いないよ」
「え?」
「三年前…世界から消えたんだ」
「世界から消えた…?」
「君と彼女は瓜二つなんだ。まるで本人なんじゃないかと疑ってしまうほどに」
「……………」
「“消えたはずの彼女が世界に存在している”」
「!」
「僕らは彼女は世界から消えたと聞かされたんだ。それなのに彼女とそっくりの君が現れた。みんなが驚いて混乱するのも無理はない」
「彼女は…どうして消えちゃったんですか?」
「罪を犯したんだ」
「罪…?」
「その代償として世界から消えた」
「(冗談を言っているようには思えない…。でも…世界から消えるなんてことがあり得るのだろうか?)」
「さて!無事に合格できたんだし、君には最初の仕事を始めてもらおうかな!」
「はい。何でもやります」
「うん、いい返事だね。それじゃ…まずは挨拶回りに行って来てくれる?」
「挨拶回り…ですか?」
「そ。皆に顔と名前を覚えてもらう為には直接会った方がいい。あ、全員じゃなくていいよ。今は復興で忙しいから皆いないと思うし。だから…二番隊と五番隊と六番隊、十番隊と十二番隊だけでいいよ」
「わかりました」
「よろしくね」
「はい」
ペコリと頭を下げてその場を立ち去った。
梨央が出て行くと京楽の後ろで控えていた七緒が遠慮がちに京楽に尋ねた。
「隊長…やはり彼女は…」
「まだ確証はないよ。それにしても…」
「どうかしました?」
「参ったねこりゃ…。皆が似てる似てるってしつこいもんだからどれほど似てるのかと思えば…まんま本人じゃないか」
背もたれに背中を預けて京楽は天井を見上げる。
「果たしてあの子は彼女なのか。
それとも…本当に顔だけ似た別人なのか」
「一人で行かせて大丈夫でしょうか?」
「ああ見えて彼女は肝が座ってる。が…隊長や副隊長を前にして緊張してるのは隠せないんじゃないかな」
「隊長と話してる時も少し顔が強張ってましたからね」
「お互いに思うことはある。彼女も、僕らも…。
全く…どういう運命の悪戯だろうね」
「…十番隊への手続きをしてきます」
「頼むよ、七緒ちゃん」
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