第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
真央霊術院を首席で卒業した梨央は入隊試験に一発で合格した。ショートカットだった髪も胸元まで伸びた。
「卒業おめでとう」
にこやかに笑って歓迎してくれたのは派手な女物の着物を羽織った男、一番隊隊長、京楽春水だった。
梨央は深く頭を下げる。
「本日よりこちらでお世話になります。まだ卒業したばかりで右も左も分からない素人ですが、護廷の為に剣を振る覚悟はできています。どうぞよろしくお願い致します」
「そんなに畏まらなくていいよォ。
もっと肩の力を抜いて気楽にして」
「ありがとうございます」
「ところで…希望の配属先はあるかい?」
「いえ…特には。」
「うーん…じゃあ十番隊はどう?」
「!」
十番隊と聞いて思い浮かんだのは銀髪の少年だ。
「彼処は真面目な隊士達が多いからきっと梨央ちゃんに合うと思うよ」
「そうなんですか。では私は十番隊でお願いします」
「手続きはこっちで済ませておくよ」
「あの…ひとつ聞いてもいいですか?」
「何でも聞いて。
僕は女の子の頼みは断らない主義だから」
「はぁ…それじゃあ…。吉良イヅル副隊長や松本…さん…という方が口にしていたのですが…"仁科梨央"さんとはどなたなんでしょうか?」
「!!」
「私を見た方々全員が必ず驚いた顔をしていたので…。まるで幽霊を見ているかのような目をしていました。あと…"生きてたのか"と口を揃えておっしゃっていました」
「…気分を害したなら謝るよ」
「い、いえ。ただ…同じ名前のせいか、気になってしまって…。あ、別に話せないならそれでいいんです」
京楽が悲しい目をしたのに気付いたか、梨央は慌ててその話を終わらせようとする。
「とても優しい女の子だよ」
「!」
「大切な仲間や友達を護る為なら自分の命を厭わない子で…どんな敵にも決して臆せず、勇敢に戦う意志の強い子で…何よりも…お兄さんのことが大好きなんだ」
少し嬉しそうに話す京楽だがその目は悲しみの色で染まっている。
「彼女は…今、どうしているんですか…?」
顔を上げて梨央と目を合わせると辛そうに笑えんだ。
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