第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
乱菊と手分けして虚を探す日番谷。
「虚の気配はあるのに居場所が掴めねぇ…」
伝令神機では近くの周辺に虚がいる事を示している。
「(もう少し範囲を広げて探すか…)」
ざわっ
「!!」
伝令神機を仕舞うと、虚の気配を感じた。
「近くにいるな…」
その時だった─────。
《誰か助けてぇ!!!》
「!?」
助けを求める声が、した。
「この…声…」
ぐらりと頭が揺れる。
「………っ!」
ギリッと歯を噛み締めた日番谷は瞬歩で消え…
ザシュッ
虚を斬り捨て、少女の前に現れた。
涙を浮かべた目を大きく見開かせる少女。
「(十の文字───……)」
ああ そうか
彼は────……
「隊長!!」
日番谷と虚の霊圧を察知した乱菊は急いで駆け付ける。
「虚は?」
「倒した」
「そうですか」
「(恐らく彼女が副官…)」
少女は突然の出来事に放心している。
「(怖くて体が動かなかった…)」
未亜の腹部を押さえる手が血で染まっていた。
「あのッ!」
「!」
「彼女を助けて下さい…!」
乱菊は少女の姿を視界に捉える。
「梨央!?」
地べたに座り込む少女に向かって名前を呼び、驚いた表情を浮かべた。
「あんた…本当に生きてたの…?」
泣きそうな表情の乱菊に少女は戸惑いの色を顔に浮かべる。
「申し訳ありません…人違いだと思います」
「人違い?だってあんたは…」
「私はあなた方が誰なのか存じ上げません」
「………………」
それでも乱菊は驚きを隠せない。
「それよりお願いします!
彼女が危険なんです!助けて下さい!」
「…診せて」
「は、はいっ」
辛そうに顔をしかめた乱菊は負傷してる未亜に歩み寄る。
「助かります…よね?」
「大丈夫よ」
乱菊は両手を未亜の腹部の上で交差させる。
すると青白い光と共に裂けた肉が治り始めた。
「すごい…」
その光景に少女は感心してしまう。
「!」
ふと視線が日番谷の背中を見る。
彼はずっと黙ったまま、こちらを振り向かない。
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