第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
ザリ…
「「!」」
物音に気付いて二人は同時に同じ方向を見る。
そこにいたのは実体化の虚にしては少し巨大だった。
「?」
少女はその虚を見て不思議そうな顔をする。
「(何…この違和感…)」
「少し大きいわね」
「未亜ちゃん…」
「これでお終いにしましょう」
刀を構えると未亜は走り出す。
「………………」
少女はじっと虚を見つめる。
すると虚の口の端が上がる。
「!!」
虚が─────笑った。
「待って!!止まって!!」
少女は慌てて未亜に声をかける。
「未亜ちゃん!!」
名前を呼ぶが聞こえていないのか、未亜は笑いを浮かべて虚に迫る。
「攻撃しちゃダメ!!今すぐ退いて!!
その虚は偽物なんかじゃない!!」
未亜は地を蹴って空中で刀を両手で振り上げた。
「それは本物の────……」
ザシュッ
少女は目を見開く。
「っ、未亜ちゃん…!!!」
虚は最初から気付いていたのか、刀を振り下ろそうとした未亜を鋭い爪で切り裂いた。
「ゴフッ!」
未亜は口から大量の血を吐き出す。
彼女の腹は肉が裂け、骨が剥き出しになっていた。
「っ………!」
まるでスローモーションのように未亜の体が地面に落ちて行く。
「(まずい…!!)」
少女は慌てて走り出す。
「(本物だった…!!
どうして本物の虚が森に!?)」
混乱する頭で必死にその応えを探ろうとする。
ガシッ
地面に落ちる直前に滑り込み、未亜を受け止めた。
「未亜ちゃん!!しっかりして!!」
声をかけるも気絶していて反応がない。
腹部からは血が流れていて止まる気配はない。
「…誰か…誰か…」
出血してる箇所を両手で押さえる。
「(未亜ちゃんが死んじゃう…)」
虚は二人に迫る。
そして鋭い爪が二人に襲いかかる。
「誰か助けてぇ!!!」
死を覚悟した少女は大声で叫んだ。
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