第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
「よろしい…。
それでこそ特進学級の生徒達だ」
天弦はニヤリと笑む。
「実習は午後!!
全員の準備が整い次第、出発する!!」
黒板を手でバンッと叩いて授業を再開させた。
◇◆◇
その頃、十番隊の日番谷と乱菊は虚が出現したとの報せを受け、森へと赴いていた。
「報告を受けたのはこの辺りですね」
「気を抜くなよ」
「わかってますよォー」
なんとも緩い返事をした乱菊をいつもなら咎めるのだが、最近の日番谷の様子はどこかおかしく、それを乱菊は心配していた。
「たーいちょ」
「!」
「ここのところずっと上の空ですよ」
「あぁ…悪い。気をつける」
「もしかして…吉良と山田の話、気にしてます?」
その問いかけに日番谷は黙り込む。そして重い口を開いた。
「本当だと思うか」
「例の少女が梨央本人かって話ですよね。…信じ難い話ですが、あたしは二人が嘘を吐いているようには見えませんでした」
「そうか…」
「だからと言って二人の話を信じたわけじゃありませんよ?もし本人だとしたらおかしな点が幾つもありますし」
乱菊の話に日番谷は額に手を当て、悲しそうな瞳で言葉を震わせた。
「一瞬、期待しちまったんだ…。あいつは本当は生きてたんじゃねえかって。山田の言う通り、記憶喪失になってるだけで、本当は消えてないんじゃないかって」
「隊長…」
「そんなのあり得ねえのにな…」
日番谷は期待した自分に失望するかのように嘲笑った。
「あいつの…声が聞きたい───。」
悲しげな表情で空を見上げ、消えそうな声で小さく呟いた。そんな日番谷に掛ける言葉が見つからない。乱菊はもどかしい気持ちだった。
「(梨央…。本当に生きてるなら…すぐに隊長に会いに来て。この人は、あんたがいないとダメなのよ───。)」
「悪い松本。仕事中だったな」
「…いえ。気にしないで下さい」
乱菊は伝令神機で虚の位置を確認する。
「少数ではありますけどバラバラに散ってますね」
「半分はお前に任せる」
「了解です」
虚を消滅させる為、二人は手分けして探すことにした。
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