第53章 Lovely-二度目の恋は盲目で-
「おはよ!」
「おはよう」
「昨日は簪届けてくれてありがとう」
「どうせ暇だったから」
笑みを見せる未亜の髪にはあの簪が付いている。
「それより聞いて!」
「どうしたの?」
「昨日『花くれなゐ』に護廷十三隊の人達が来てたんですって!」
ギクッ
その話題に少女は心臓が跳ねる。
「なんでも副官同士が結婚されるみたいなの」
「…そうなんだ」
「しかもよ!なんと結婚するのはあの四大貴族の“朽木家”の義妹、朽木ルキア様らしいの!」
「(“朽木…ルキア…”)」
「どうかした?」
「ううん、なんでもない」
「さ!早く教室に行きましょう」
前を歩く未亜の後を追う。
「(昨日のアレは何だったんだろう…)」
もちろん花太郎の態度だ。
まるで幽霊でも見たかのような驚きっぷり。
彼は私を知っているみたいだった
気になることを言ってた気がするけど
それよりも…
「(彼は“私”を知る人物…?)」
少女は難しい表情で考え込む。
「(まぁ…護廷の方とは早々会うもんでもないし気にする必要はないか…今はまだ…)」
パッと考えるのをやめて未亜と一緒に教室に入った。
「おはよう!!特進学級の諸君!!」
一年第一組に在籍している二人は担任の如月天弦の下、死神になる為の授業や試験を受けている。その試験は毎回厳しいもので、成功者は少なく、唯一満点の成績を得る少女は皆の憧れであった。
「今日は疑似体験を行う!」
「疑似…体験?」
「森へ出向き、学院が用意した装置を使って実体化を可能とした虚を討伐してもらう!」
ザワッ
「で、でも先生!
実体化した虚は危険じゃ…」
「それに怪我したら…」
「安心しろ。実体化とは言え、本物の虚と戦う訳じゃない。能力も下げてあるし、怪我など擦り傷を負う程度の強さだ。それとも特進学級の諸君は…偽物の虚を相手に怖気付いて尻尾を巻いて逃げるつもりかね?」
煽る様な言葉に先程まで不安そうな顔を見せていた生徒達の顔つきが真剣なものへと変わる。
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