第52章 Reunion-×××を望んだ少女は-
「ちゃんと前を見て歩かなきゃダメじゃないの」
「す、すみません!」
花太郎は慌てて頭を下げる。
「その女の子がどうかしたのかい?」
「吉良副隊長によろしく伝えてくれって…」
「なんだ吉良、お前にも春が来たか?」
「ち、違いますよ!」
「そんな必死になって隠さなくてもいいじゃない」
からかうように乱菊がニヤリと笑う。
「本当に違います!そもそも僕はその女の子を知らないんですから!山田君、その子は何か言ってなかったかい?」
「えーと…吉良副隊長が霊術院で講演した時の話をしてました。それに対してお礼も言ってました」
「え…?」
花太郎の言葉に吉良の顔色がサッと青ざめた。
「吉良?アンタまで顔が真っ青よ」
「君も…会ったのかい?その…彼女に…」
「や、やっぱり彼女は…!」
二人の間だけでやり取りされる会話に、周りはついていけず、複雑な表情を見せる。
「ちょっと何の話してんのよ。アンタ達だけが分かっててもアタシ達には何の話だかサッパリわかんないわよ」
「………………」
「吉良、山田。何か隠してるなら話せ」
日番谷に問いただされ、二人は困った表情を浮かべる。
「もしかしたら本当に人違いかもしれません…」
「顔が同じで中身は全く違う別人の可能性も…」
「だから何がよ」
二人は顔を見合わせ、一同を見た。
そして同時に言葉を重ねた。
「「梨央さん/仁科隊長を見たんです」」
座敷が一瞬で静まり返った。
その場にいる全員が金縛りにあったように体を硬直させ、驚いた顔で吉良と花太郎を凝視している。
「今…なんて…?」
その沈黙を破ったのは乱菊だった。
「さっき会ったんです…梨央さんに似た人に…」
「僕はこの前の講演の時に…彼女と会いました…」
「本当に仁科だったのか?」
「わかりません…」
花太郎は確信が持てず、頷けなかった。
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