第52章 Reunion-×××を望んだ少女は-
「す、すみません!!
怪我はないですか!?」
「いえ、大丈夫です」
差し出された手を取って立ち上がる。
「ちゃんと前も見ずにすみません!!」
「私の方こそもう少し注意を払うべきでした。
あなたこそお怪我はなかったですか?」
「あ、僕は大丈夫で…」
ぺこぺこと何度も頭を下げる花太郎が顔を上げ、少女を見た瞬間、稲妻が落ちた様な激しい衝撃が襲った。
それは酷い驚き方で、どこかの鯉の様にパクパクと口を開閉させ、目を見開いている。
「あの…?」
「梨央さんっ!!?」
ビクッ
突然花太郎が大声を出すと少女は体を跳ねさせた。
「は、はい…」
「どうして此処にいるんです!!?」
花太郎はパニックになっていた。
それは少女も同じで、花太郎を見て狼狽えている。
「た、確かに私は梨央ですが…あなたはどちら様ですか…?」
「え?」
「霊術院の生徒…ではないですよね?その服は…死神が着るもの…ということは…あなたは護廷十三隊のお方ですか…?」
「…僕のこと、覚えてないんですか?」
「え?」
「というか生きてたんですか!?」
「な、何を言って…」
少女は困惑の色を顔に出す。
この少年はどういう訳か、自分のことを知っている口ぶりだ。だが少女は少年とどこかで会った記憶も、会話をした記憶もない。これが初めてなのだ。なのにこの少年は初めて会った少女の名を知っていた。訳が分からず、困った顔を浮かべる少女。
「本当に…梨央さんじゃないんですか?」
「名前は同じですが人違いだと思います」
「人違い…」
「私はあなたのことを知りません」
花太郎はじっと少女を凝視める。
髪の色も瞳の色も、左目の泣き黒子だって“彼女”と一致している。にも関わらず、目の前の本人はそれを否定する。
「(でもここまで似過ぎてるのは…)」
胸元まであった髪はショートカットになっており緩いウェーブがかかったようなゆるふわの髪型になっていた。
美人顔なのは元々らしい。
人の目に留まる程の美しさだ。
それでも三年前に消えた彼女と目の前にいる彼女が同一人物であるという証拠はどこにもない。
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