第52章 Reunion-×××を望んだ少女は-
「(あいつが今もここにいたら…)」
一度だって忘れたことのない、最愛の恋人。
「(どれほど幸せだったんだろうか…)」
「梨央のこと…考えてるんですか?」
「いや…」
「隠しても無駄ですよ。
あたしにはすぐバレるんですから」
そういう乱菊の目にも悲しい色が宿っている。
「楽しみにしてたんです」
「何をだ?」
「隊長とあの子の結婚式」
「!」
「すっごく楽しみにしてたんですよ」
「………………」
「二人は幸せになると思ったんです」
「…そうか。けど悪い松本。
俺達のは…永遠に叶いそうにない」
悲しそうに目を伏せる日番谷。
少し離れた位置に座っている吉良は何か言いたそうな顔で日番谷を何度も見ていた。
「ちょっと吉良」
「え!?」
「さっきから変よ」
「いえ…そんなことは…」
「隊長のことばっか見てどうしたのよ」
「それは…」
「何か言いたいことがあるのか?吉良。」
「え、えーと…」
吉良は迷っていた。
先日、霊術院で会った彼女のことを話そうかどうか迷い続けた結果、挙動不審になってしまい、無意識に日番谷を見ていたらしい。
「日番谷隊長」
「なんだ」
「幽霊って信じますか?」
「は?」
「突然何を言い出すのよ。
幽霊なんているわけないでしょ」
「で、ですよね…じゃあやっぱり別人…」
「幽霊でも見たか?」
「いえ…どうやら僕の錯覚だったみたいです。
すみません、忘れて下さい」
頭を下げる吉良に日番谷と乱菊はハテナを浮かべた。
「ちょっと僕、お手洗いに…」
花太郎が席を立ち、座敷を出た。
◇◆◇
「庭園が綺麗で思わず魅入ってしまった…」
未亜への忘れ物を届けに『花くれなゐ』にやって来た少女はその帰り道、手入れの行き届いた庭園をしばらく眺めていた。
「さて本当に帰ろう」
踵を返して歩き始め、角を曲がった時だった…。
ドンッ
「わっ!?」
「うわあっ!?」
誰かとぶつかり、少女はその場に尻もちをついて座り込む。
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