第52章 Reunion-×××を望んだ少女は-
「(髪色や瞳の色は彼女と同じなのに…威圧的な雰囲気も過度な態度も無い…僕に対しても低姿勢だ…やはり人違いなのか?)」
吉良は益々混乱する。
「学院長、少しお話が…」
「何じゃ、先客がおったか」
「四楓院先生!」
開け放たれた窓の外から、黒髪の女が飛び込んできた。
頭の動きに合わせて、艶やかなポニーテールが揺れる。
両手を腰に当て、ニィと笑った夜一は…
「久しぶりじゃの、仁科」
「お久しぶりです」
少女に歩み寄って言葉を交わす。
「勉学の方はどうじゃ?」
「今のところは順調です」
「次の試験も余裕そうじゃな」
「そんなことはありません。これでも一応、緊張はします。ですが…次の試験も満点を取れるように頑張ります」
「そうかそうか」
胸の辺りでギュッと両手の拳を握りしめて気合を入れる少女の頭を夜一は優しく叩く。
「学院長先生ー!終わった書類を貰って来いって言われて来ましたー!」
男子学生と思わしき声が、扉越しに聞こえてくる。
「自分で持って行くから大丈夫だ!……ちょっと行ってくるよ。そうだ話しがあったんだったな仁科、終わってからでもいいか?」
「はい。私もそろそろ失礼します」
“仁科”と名乗った少女は二人に頭を下げると石和と共に部屋を出て行った。
扉が閉まるのを見てから、吉良は夜一に尋ねる。
「あの…四楓院さん…」
「何じゃ」
「今の…彼女は…」
「さっきも紹介されていたじゃろうに。
彼奴は仁科じゃよ」
「それは…どっちの…」
「………………」
唖然とする吉良の言葉に夜一は黙ったままだ。
「だっておかしいじゃないですか…彼女は消えたんです。いえ…“死んだんです”。日番谷隊長から僕達は全てを聞かされたじゃないですか。なのに…これは一体どういうことですか…」
困惑した表情の吉良。
夜一は扉を見つめる。
「確かに梨央はあの大戦後、姿を消した。日番谷の話だと『悪』との取り引きに応じ、望みを叶える為に世界から消えることを選んだとな」
「そうなんです…消えた筈なんです…。
それなのに彼女と瓜二つの少女がいるなんて…」
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