第52章 Reunion-×××を望んだ少女は-
「いやァー素晴らしかったわね!
吉良イヅル副隊長の講演!」
「思わず聞き入っちゃったよ」
「でもあの人、登壇する前に医者に診てもらった方がいいと思うわ」
「私も思ったよ、それ」
そこで何かを思い出したように、あ、と声を漏らす。
「どうしたの?」
「学院長に用があったんだった」
「学院長なら来賓室にいるんじゃない?」
「ちょっと行ってくる」
「先に行ってるわ」
頷いた少女は踵を返して来賓室に向かった。
「………………」
学院生達が各々の教室に帰って行く中、少女は先程の講演を行った吉良イヅルについて考えていた。
「(流石は卒業生…素晴らしい講演だった。でもあの人を見た時、心がザワッてした。初めて会う人なのに…どうしてだろう?)」
答えに辿り着く前に来賓室に着いてしまった。
「(まぁ…考えても仕方ないよね。)」
頭の中から消して来賓室の扉に手を伸ばす。
トントンッ
控えめに叩いてみる。
「失礼します。入ってもよろしいでしょうか?」
扉の向こう側から“開いているからどうぞ”という声が聞こえたのを確認すると少女はドアノブを回して扉を押し開けた。
吉良の藍色の瞳が、真っ直ぐに少女の姿を捉える。
「っ!!?」
するとソファーに深く腰掛けていた吉良が幽霊でも見ているかのような驚き顔で少女を凝視した。
「き、君、は…」
ソファーから立ち上がった吉良の顔は青ざめている。
「おお、君が来賓室に来るなんて珍しいな。
何か用か?────“仁科”」
「(仁科!?)」
石和の言葉に吉良は過剰に反応する。
少女は不思議そうに吉良をじっと凝視めている。
「吉良、紹介するよ。
彼女は我が院屈指の優等生だ!」
嬉しそうに少女を吉良に紹介する石和。
「(この少女は…“仁科隊長”なのか?だとしたら何故こんな所に通ってるんだ?いや待てよ…別人の可能性も…)」
「吉良イヅル副隊長」
「え!?」
「先程の講演、とても素晴らしかったです。今回は貴重なお時間を作って頂き有難う御座いました」
少女は深々と頭を下げる。
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