第51章 Historia-そして物語は完結する。-
【霊王宮】
「ご気分は如何ですか?」
「…聡明」
自分の宮殿に居続ける蒼生の前に赤髪の男が現れる。彼は温厚な笑みで蒼生に語りかけた。
「…全部終わったか」
「先程。黒崎様が滅却師の始祖を討ちました」
「そうか」
「ところでご友人の姿が見えませんが…」
「帰したよ。あいつも色々と自分の頭で整理したいこともあるだろうからな」
「そうでしたか」
「なァ…聡明。あの日から何年経ったんだろうな。母さんを失った日からここまで来るのに…随分と遠回りをした気がする」
蒼生は遠い目を壁に向ける。
「梨央は今どこにいる?」
「尸魂界に降りたそうです」
「日番谷にでも会いに行ったか」
「ようやく…全て終わりましたね」
「あぁ…ようやく全て終わった」
蒼生はゆっくりと聡明を見る。
「あいつは俺のことばっかだったな」
「?」
「俺を護る為なら何だってした。昔っからそうだ。一人で抱え込んで全部背負っちまう。だから俺は…あいつを守ろうと思った」
そう言って笑い、聡明に告げる。
「聡明、お前知ってたな?」
「何をでしょう」
「“あれ”についてだ」
「……………」
聡明は温厚な笑みを向けたまま、何も答えない。
「そうか…やっぱり知ってたのか」
蒼生は悲しそうな顔を浮かべる。
「何で俺を咎めない?」
「彼女を想ってのことだったと理解してます」
「……………」
「『目に見えない真実に気付け』」
「!」
「彼女が真実から目を背ける限り、その言葉の意味に気づくことはないでしょうね」
「…気付かないかもな。いや…気付いてるけど“見えてない”のか」
蒼生は静かに短い息を漏らす。
「ずっと護ってきたんだ。あいつが泣かないように、いつまでも笑っていられるように…俺の守れる範囲であいつを守ってきた」
「よく知ってます」
「あの男がいなければ俺達はあの頃のまま、幸せな家族でいられたのにな」
「そうですね…」
聡明は悲しい色を瞳に宿し、目を伏せる。
「…これで救われる」
ポツリと小さく呟く。
「聡明、頼みがある」
蒼生は軽く笑った。
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