第51章 Historia-そして物語は完結する。-
「私は幸せ者です」
「!」
「こんな素敵な人に愛された。そしてこんな素敵な人を私は愛した。私に幸せを教えてくれてありがとうございます、日番谷隊長」
涙を残した顔で嬉しそうに笑う。
「あなたに出逢えて本当に良かった」
「…俺もだよ」
それに応えるように日番谷も笑い返す。
その表情は少しだけ悲しそうだ。
「お前に出逢えて本当に良かった」
「こんな私を許してくれますか?」
「どんなお前でも俺はお前の全てを許す」
「嬉しいですねぇ」
「…………………」
「隊長…そんな顔、しないでください」
「どんな顔だ」
「泣きそうな顔です」
「そんな顔はしてねえ」
そういう日番谷の目は少しだけ潤んでいる。
「してますよ。私と同じですね」
ニッコリと微笑む梨央の目にも涙が浮かんでいた。
「お前のが移ったのかもな」
「泣く隊長はレアですね」
「泣いてねえしレアでもねえよ」
「ふふっ」
梨央は笑うと頭に挿してある髪飾りを取って日番谷に差し出す。
「この髪飾り、隊長がプレゼントしてくれた時、すごく嬉しかったんです」
「お前に似合うと思って選んだからな」
「はい。私の好みでドンピシャでした。
これを…隊長に預かっててもらいたいんです」
「預かる?」
「本当は形見とか残したくないんですけど…」
へらっと切なそうに笑う。
「…貰ってくれますか?」
「…………………」
綺麗な装飾が施された美しい髪飾り。
青と緑の色合いが葉と雨を連想させる。
そして彼女の瞳の色に似合うと思った。
「わかった。これは俺が大事に預かっておく」
髪飾りを受け取る日番谷。
「ありがとうございます」
梨央は受け取ってもらえたことに内心ホッとした。
「隊長」
「何だ?」
「烏滸がましいのは重々承知の上なんですが…最後にもう一回だけ、ギュッて抱きしめてください」
「何だその可愛い頼みは」
と言いつつ、日番谷は少し照れながら梨央を抱きしめる。
「もし…違う形で出会っていたら別の運命が待っていたかもしれません」
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