第51章 Historia-そして物語は完結する。-
日番谷の言葉に悲しくなって涙が浮かぶ。
「今も涙で顔が濡れてんのに更に濡らす気か?」
「………………」
「俺はお前を嫌いになったりしない」
「わ、私は…隊長が…き…きら…い…です…」
「本当にそう思ってるのか?」
「お、思って…ます…」
「なら真っ直ぐ、俺の目を見て言えよ」
「!」
「ほら」
「や、あの…放して…」
「駄目だ。放すと顔逸らすだろ」
逃げられないように日番谷が梨央の頬を掴んでいる。
「ほら、早く言え」
「っ…………」
「さっきは言えただろ」
「き…きら…」
嫌いと言えたら
どんなに楽だろうか
この人に嫌いと言うだけ
それだけでいいんだ
なのに……
「うぅ……」
「………………」
「た、隊長…」
どうしよう
どうしようどうしよう
「隊長ぉ…ひっく…」
「!」
「き…好き、です…」
日番谷は微かに目を見開く。
「好き…好きなんです」
ポロポロと涙を流しながら素直な気持ちを伝える。
その想いに日番谷は顔を綻ばせて嬉しそうに笑う。
「だから…き、嫌いにならないで…下さい…っ!」
ギュゥゥッと日番谷に抱きついた。
「嫌いになっちゃ…や、です…っ。
隊長…好きなんです…っ」
「嫌いになるわけねえだろ」
そう言って日番谷も抱きしめる。
「俺も好きだ」
「!」
「愛してる 梨央」
「はいぃ…っ」
「だから消えるな」
「!」
「俺を置いてどこにも行くな…!」
日番谷は苦しそうな声で言う。
「…行かないでくれ」
「っ………………」
「一緒に幸せになるんだろ?俺だけ幸せになったって意味がない。お前と一緒だから幸せになりたいんだよ。俺がお前を幸せにしてやる。だから…俺のそばから離れて行くな」
悲痛な想いが声となり、梨央の心に響く。
「…………………」
どうしてだろうか
隊長が必死に想いを伝えてくれているのに
何故か嬉しさで顔を綻ばせている自分がいる
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